夜話はそっと語られ森に置いてくるもの。 数のない夜は父をおもうわたしのために語るもの。 ついこのあいだ盆送りをしたと思ったら、彼岸になった。 盆にしか家に戻らないなら、向こう岸から手でも振ればいいものを。 秋彼岸の花は萩、棚からぼたもちも落ちてこないから、 もとより好きでもないおはぎは作らなかった。 時が傷みを和らげるそうだけれど、悼(いた)んでなお痛いところに 追っかけ追っかけ彼岸までがやってくる。 追っかけ喪中葉書の準備を終えればやがて追っかけ一周忌の準備、 追っかけは、じきに、というより文字通り追いかけてくるような、この地の言い回し。 気ぜわしいのはわたしだけではない。 果物の里、この地の秋は忙しい。 彼岸を境に梨は美味さを増すのだそうで、二十世紀や豊水が出回ってきた。 彼岸の入りには桃もあり、ゆうぞらという品種が桃のおしまい。 時期を重ねてリンゴも出始め、さんさという品種を食べながらゆうぞらも食す、季節の不思議。 さんさ時雨は唄にあり、彼岸の入りは雨つづきだった。 葡萄はさまざまな品種が短い季節に出回る。 夏の終わりにあずましずくから始まり、巨峰、スチューベン、ピオーネ、ハニーブラック、、、 じつはそれぞれ味の違いはあるが、わたしは目で見ても品種の違いはわからない。 けれど、果樹園の近くを通りかかると、そこは空気が甘く、果物の匂いがする。 香りというにははっきりとした、これから完熟期に入るひとつ手前の匂い。 どうしてこの地に生まれたのだろう。 わたしはさほど果物が好きではない。 * * 今夜は追っかけ追っかけ、季節のお写真を。 ビンの中には、ズッキーニの花のマリネ。 南も北もいっぺんに咲く花。日本中に彼岸の中日を知らせるつぼみ。 その先には林檎畑があって、リンゴの赤に彼岸花の赤。赤の諧調を言葉で言えればいいのにな。 きみどりはオリンピア。奥はハニーブラック、手前は、、、なんだろう。
by NOONE-sei
| 2008-09-30 02:21
| 数のない夜(23)
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