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ときおりの休息  六  町屋の幸


まだ自分の方向が定まらない頃には、
同じように欲求不満と表現意欲と金欠病がないまぜになった者たちが集う。
ギャラリーや小劇場や洒落た店を探し、しかもそれらはとりすました表通りではなく、
どちらかといえば裏路地にあってほしいと願う。
かといって生活の匂いがあってはならず、斜に構えた風を装いつつ熱気を共有しなければならない。

葉書やチラシを どこか一風(いっぷう)変わっていてなにかテーマを持つような場所に置いてもらい、
絵画であったりイラストであったり詩画であったり芝居であったり、
自分をなぞらえるための手段や装置を使ったものを観てもらう。
または描(か)くのでも書くのでもなく、世相を引っ掻くひそやかなたくらみをもって
フリーペーパーを発行するというやり方もある。

やがて集った群れがちりぢりになる頃には、
方向を定めなければならない時期を迎えていたり、
行き詰まりに悩んで、軽やかに具現化していた頃の自己模倣に迷い込んだり、
自己に引き寄せすぎた作品が受け入れられないことに憤(いきどお)ったり正当化したり、
それらひととおりの通過儀礼を踏んで青年は成年に近づく。

どうあるべきだとか、どう受け止めてもらいたいだとか、
そうした青臭さと決別して、ただ歩むことを始めるのはこの頃からで、そうしてそれからがおもしろい。
ただし、推敲のなされていない作品は、どれほど数を重ねても、浅い。
頭でなく腹で思考するようになると、群れの成年はひとり歩きを始める。
 



■空堀(からほり)町にて
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坂の多い界隈、この石段を下りるとそこは裏路地。わくわくする。

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石段を真上から撮った。なぜに瓦が縦に埋め込まれているんだろう?



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商店街をちょっと横に入ると、洒落たギャラリーなどがある。
道行く人が手に取れるように表に置いてあるDMのかずかず。どれも凝ったデザイン。



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町屋を残しながら手を入れて、雑貨屋、カフェ、パブなどが路地にぽつぽつとある。
そんな店のひとつ、綺麗な灯り。



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路地に面した低い窓。よく見ると油彩用の額。



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町屋のひとつ。長屋を改築し、なぜか屋根に緑が生えている。



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奥まった路地にある雑貨屋サリーさんの店。



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一枚の絵のなかに豊かな背景話を語ってくれたひと。



大阪で町屋というのを初めて見た。
ここで何かをしようと思わせるような、木でできた家並み。
ここにくれば何かがありそうと思わせるような、商店街の裏路地。
集う群れもひとりになった者も受け止めたいと涌き出した界隈。
by NOONE-sei | 2008-07-19 02:18 | ときおりの休息 壱(14)


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