ときおりの休息  五  屋根の幸



               雪                  詩: 三好達治


          太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ

          次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ



眠らせるのは誰だろう、と、主語を探して「母」だと言う人もいれば、
眠らせるとは何だろう、と、「死」を指し示す人もおり、
太郎、次郎がいるのだから、三郎、四郎と続く「永遠」が主題だと言う人もいる。
だだ感じればよいのだから、作者の意図を追うのは野暮だと言うひともいる。

わたしはこの詩を習ったことがない。
そしてちいさいさんたちに、この詩を読んでやったことがない。
書かれていない余白まで読むには、
子どもが行間を読むということはむずかしすぎる。

よくむかしばなしを読んでやる。
でも詩は読まない。
まずは物語という風呂にたっぷりつかって、肌のような触覚が玉子のようにつやつやして、
そのようにして、思い浮かべるちからというものは育(はぐく)まれるものだろうと思う。

詩がどれほど曖昧な味わいを印象づけても、作者が曖昧に書いているということはない。
緻密で精密な語彙選びが底に流れている。
その上で、読み手は各々(おのおの)の砂金を得手勝手にすくい取る。
わたしはこの詩に、色でも形でもなく、音のない音を感じる。




■住宅街の屋根
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門の上、細工の美しい意匠。



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凝ったつくりの屋根。



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白い壁の家。



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板壁の家。
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板壁。




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ちいさい家。
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ちいさい家の窓。



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窓。




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雨どい。


ため息の出るような美しい屋根の群。
大阪に着いてすぐに気づいたのは、わたしの住む地よりも圧倒的に軒(のき)やひさしが短いということ。
そうしてさりげなく銅が葺(ふ)いてあったり当たり前のように瓦の屋根だったり。
瓦は重く、短い軒では雪で入り口が塞がれてしまう。

「雪が降ったら困るでしょう」と言ったら、
その晩いっしょに建物を眺めて歩いてくれた友人達が口をそろえて
「雪は降らないんです」と答えた。
そうだった、ここは大阪。
父が好んで建てた、数寄屋造りの本場だった。

屋根の下には、北国なまりの太郎や次郎ではなく、
なにわことばを話す太郎や次郎がいる。
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by NOONE-sei | 2008-07-10 01:58 | ときおりの休息 壱(14)


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