今夜を写真保管庫にするか67夜にするか、迷った。 迷って決めかねたのだけれど、きまりがつかないまま、またゆるゆるとお話を始めようと思う。 「女の子の食卓」(志村志保子)という漫画がある。 よく訪問するウェブログで教わって以来、大切に読んでいる。 教わらなかったらきっときっと出会うことのない作品だったと思う。 父の病が痛くて、映画も漫画も遠ざかってしまった。 いつだって美しい娯楽をかたわらに置かなくてはいられなかったはずなのに、一変してしまった。 絵空事が虚(むな)しいとかくだらなく感じるとか、そういうことではなく、 娯楽がわたしを呼ばず、わたしの眼は見えず耳は聴こえないというような。 それが少しずつ開いてきた。 寝る前に一編だけ読もうか、という気持ちになって手にしたのが「女の子の食卓」だった。 静かでなにげない挿話が幾つか描かれて一冊の本になっている。 珠玉という言葉があるけれど、ほんとうにそのとおり、ちいさな光を放つ。 挿話のひとつに、ふたりっきりで生きてきた兄妹のお話があって、 兄が結婚してひとりになった妹が、けなげにがんばろうとする。 義姉は華やかで料理上手で、妹に「○○ちゃんてーあんまり料理できないのねー、 そんなに地味なのに料理できなかったらどうやって男つかまえるの?」などと言う。 新婚家庭の邪魔をしないよう気遣う妹は、義姉からおせち料理を手伝ってと誘われる。 買い忘れたというはんぺんのおつかいに行って、妹はふと「はんぺんなんておせちに使ったっけ? こんなの本当に要るのかな。別になくたって。別に 私 いなくたって。」と思う。 そっと帰ってしまおうとしたら、義姉が、「ほんとに使うのに!勝手に要らないなんて決めないでよ!」と怒る。 妹が自分を 要らない存在邪魔な存在とひとり決めしたことに対して悲しんでいたのだ。 わが家のおせち、今年は煮しめを作る時間が持てなかったら本家が届けてくれた。 お重は王様が、駅裏の台湾料理屋に注文してくれた。 年末は忙しいだろうから犬を預かろうか、と犬友達が申し出てくれ、 さみしいからときどき近況を知らせてと言ったら、ちょこちょこと友人がメールをくれた。 そんな、なにかあたたかいつっかえ棒があちこちから伸びてきて、 66夜の年始の挨拶にはコメントまでいただける。 さみしがりやのわたしがさみしがらずに、ひとりじゃなかった幸せを思う。 はんぺんを材料に使うおせちがあると知ったのはお正月の少し前に「女の子の食卓」を読んだから。 卵とはんぺんと砂糖をミキサーで混ぜて焼いたら、伊達巻きのできあがり。 王様と鰐号が大好きなおせちだ。 今ではすっかりお姉さんになっているかな。
by NOONE-sei
| 2008-01-07 03:10
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