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73夜 秋の雨、冬の雨


今月の日曜日はどれも特別だ。
芋煮会をしなくちゃいけない。きっと、この地の人たちはだれもがそう思うんじゃないかな。
それなのに雨続きで、夜は雷が鳴って、
今日の芋煮会の予定がつぶれた人は大勢いるんじゃないだろうか。

バーベキューとは言わない。
河原で石の炉に火を炊いて鍋をかけ、芋煮汁を作り、湯気の立つどんぶりからふうふうと食う。
主役は芋煮汁だけれど、脇役はおにぎりだっていいし、でもそれは無くたっていい。
具の無くなった鍋にうどんを入れて食うから。
実際には、焼きそばや肉や海鮮も焼くけれど、無くたって芋煮があれば芋煮会だ。

秋の収穫祭に米。でも、里芋がとれるとそれは特別なこと。
特に里芋が好きだというわけでもないわたしでも、芋煮には胸が躍る。
登山客へも、地域の運動会でも、白鳥飛来の歓迎にも、秋祭りにも、
振る舞いといえば芋煮。
地域の婦人会というのだろうか、女性たちがエプロン姿で大鍋を煮てくれる。
きっと今日もそうした行事なり、会社の親睦会だとか子供会だとかの予定なりがあっただろうに。

今日は、もうひとつ気の毒な行事があった。
わたしにとっては毎年のことだから、行事という感覚なのだが、
東日本女子駅伝が、今年はこの寒さのなか行なわれた。
町の中心、県庁を出発して何十キロもたすきリレーをする。
扇状地なので、山に向かってなだらかな坂道がずっとずっと続く。ほんとうにずっとだ。
うちのすぐそばを通るのでよく応援に行くのだが、沿道で応援する人の必ずひとりは一緒に走る。
ある年は子供だったり、ある年はおじさんだったり。
じかに走るさまを見ると、どれほどの速さなのか一緒に走ってみたくなるものらしい。
けれど、それは想像以上の速さなので、選手たちはあっという間に駆け抜けて行ってしまうが。
今日の選手たちは気の毒だった。
顔を叩く雨をぬぐうこともせず、もくもくと走る。
体中の熱を速さに換え、肉も骨もエネルギーに換えて走るんだろうに、雨は熱を奪う。
今年の沿道には、一緒に走ってみる人はいなかった。

もう、初雪も間近にちがいない。
昨日から雨は降っていたけれど、今日の雨は冬の雨だ。
みぞれまじりの雨って、こんな雨のことを言うんだろう。
物知らず、言葉知らずのわたしでも、肌に感じる冷えた雨だ。


73夜 秋の雨、冬の雨_c0002408_1365100.jpg


参考:芋煮のお写真はこちら
by NOONE-sei | 2006-11-13 01:12


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