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29夜 浦島亀子


亀といえば、いつもは亀の子束子(たわし)が浮かぶのだが、今夜はちがう。
鶴は千年、亀は万年。・・万年って、「いつもいつも」という意味か。

ここ一週間ほどひどい風邪に悩まされ、外に出なかった。
思い返せば、病院をまるで脱走するように退院し、
母と桜を追ってあっちだこっちだとむちゃくちゃに動いたのが祟って、
父は退院直後に風邪をひき、病院で点滴をされた。

風邪は、誰かにうつすと治るとか。
父は母にうつし、母はその風邪を後生大事に抱えながらせっせと父と出掛けた。
あんまりふたりの鼻声が長引くので、言いたかないけど、、、と
外出を自粛するよう苦言を呈してみたのだが、彼らの行楽熱は引けない。
そうこうするうちに、わたしの喉(のど)が腫れてきた。
夫婦ふたり分の風邪を一手に引き受けたからたまらない。
喉の痛みから体の痛み、鼻水、咳とお決まりの循環の日数(ひかず)が長くかかった。

時間の長さとは主観的なものだったのか。
この一週間は、妙に長かった。そして妙に浮世から離れていた。
ふわふわと身だけが軽く気は沈み、わたしという門の内側と外側の時間の流れに違いがあった。

きのうは五月の爽やかさ。
山を見て驚いた。ずっと毎日見ていたはずの蒼い蒼い山が、みどりだった。
万年ぼんやりで気づかなかったとはいえ、いつのまに新緑になっていたんだろう?
折りしもきのうは安達太良の山開き。
今朝、父と母はさっさと身支度を整え、稲荷寿司を持って安達太良に行った。

山の変化に突然気づいたわたしは、稲荷の狐につままれた?
それとも、浦島太郎ならぬ、浦島亀子になって浮世に戻った?
by NOONE-sei | 2006-05-22 18:51 | 新々百夜話 父のお話(8)


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