8夜 夜更けのふたくち女


子どもに話して聞かせるお話。
子どもは怖い話が好きだ。

「黒塚」という能にも謡われる、安達が原の鬼婆伝説。
山姥から逃れるのに、身代わりになって助けてもらう「三枚のお札」。
食を摂らないから家計に都合がいいと娶(めと)った嫁は、
主人の留守に髪の中に隠したもうひとつの口で握り飯をむさぼり食う、鬼婆「二口女」。
女の鬼は皆怖い。

男の鬼も女の鬼も、やっつけられてしまうことに違いはないが、
恐ろしい存在としての男の鬼は、成敗されてめでたしめでたし。
わたしが知っている男の鬼で唯一悲哀があるのは、浜田広介(ひろすけ)の「泣いた赤鬼」。
一方、女の鬼は、子を失くして気がふれて鬼になったとか、その背景が悲しい。
鬼子母神という、人ならぬものとして神や仏の手で昇華してやらねばならぬほど、
母の情愛とは濃くて強(こわ)くて怖いもの?

子ども向けのお話には省かれているけれど、「二口女」の結末も知ると怖い。
鬼になった女房は、自分で作らせた桶の中に亭主を押し込めると、
背負って山奥深く連れ去って行くのだそうだ。
飯も食わずに働き者でよく尽くしたはずの、女房のもう一つの姿を見た亭主は、
女房を人間らしい存在として扱わなかった罰を受けたんだろうか。

親が子にお話を聞かせるのは、絵に描いたような幸せだ。
絵本の読み聞かせや紙芝居もいいけれど、素話(すばなし)。
何も見ないで話して聞かせる物語が、子どものいちばんのご馳走なんだという。

わに丸が寝入るまで、わたしは毎晩絵本を読んで聞かせた。
けれど、素話は苦手だった。なにしろ、わたしの素話ときたらただの思いつきで、
「白いお坊さんと黒いお坊さんが、ふたりで高くて凍った山に登りました、、、」
しかも途中で話が続かなくなる。わに丸はつまらなそうにあくびをしながら寝てしまうのだ。
 王様は、わに丸が寝る時間にはほとんど帰ってこれなかったけれど、
それでもたまに、添い寝をしてやれるときがあって、そんな時、素話は王様にかなわない。
わに丸はにこにこして眠る。それはとてもとても小さかったころのこと。

とうの昔に寝る前の読み聞かせはおしまい。
けれどお話みたいに、わたしはもしかすると二口女だ。怖くないけど。
普段は、スナック菓子をほとんど食べないので買い置きもあまりしない我が家。
三ヶ月(みつき)にいっぺんくらい、夜更けに、わたしは憑かれたように一気に食うことがある。
一袋を食えば治まる、理由もわからない。
 ・・これはなにかの発作だろうか?
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by NOONE-sei | 2006-03-20 19:35 | 趣味の書庫話(→タグへ) | Comments(6)
Commented by at 2006-03-20 19:56 x
ということは、やっぱり私は週に2、3回
発作が起きるということか!?
Commented by NOONE-sei at 2006-03-20 23:54
坊さん、
そか、坊さん「も」、もとい坊さん「は」、妖怪だったか、二口男。
週に2~3回妖怪変化では、そりゃ忙しいわなぁ~~。くすくす
Commented by at 2006-03-21 10:06 x
妖怪「脂塊坊」なんて、かっこ良くない!?
忙しくて、痩せるひまもない!!!
Commented by NOONE-sei at 2006-03-21 12:14
ぎゃはは。
読みはかっこいいと思うけどねー。意味がねー。
「肢戒坊」のほうが痩せる気がする?
>忙しくて、痩せるひまもない!!!
貧乏ならぬ鬢坊ひまなし。
「鬢多々良」/伊福部昭作品集にあやかってみました。
って、この会話、はちゃめちゃか?
Commented by ひす at 2006-03-23 13:09 x
「おいしいお菓子がございます、おいしいお茶もございます。」

あの青鬼の心遣いに、子供心に泣きました。
そして、赤鬼に「人間と仲良くなっている場合ではなく、青鬼を追いかけて連れ戻せ!」とも思いました。
でも今では青鬼の気持ちもわかるで、赤鬼にこう言いたい!
「人間の青鬼に対する誤解をとくべきだ!」ヽ(・∀・)ノ

この話今でも大好きです。

>素話
ほほ~、そういう名前があるのですか。
私は良く、うちの飼い犬たちを主人公にしてお話を作って聞かせたり、
ち小さな本(↓)を作っていました。
http://hisuaki.hp.infoseek.co.jp/inuhanasi/inu22.htm
Commented by NOONE-sei at 2006-03-23 18:52
ひすさん、
まず、ひすさんにお礼を言わなければ。
この二口女のお話は、ひすさんにインスピレーションをもらいました。
7夜のコメントのやりとりから浮かんだものです、ありがとうね♪

「泣いた赤鬼」は、わたしは胸がよじれるお話で、大嫌いです。
正確に言うと、大嫌いと言わねば立っていられない、それくらい子供心には
衝撃だったのですね。物語世界に持っていかれそうな心を守らねば、という思い。
なんて切ない物語でせう、、、、。

ちいさな絵本、拝見しましたよん。その後、犬は肥え続けたんだろうか、、、
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