14夜 爺っ子


わに丸は寂しい。
じいじが入院した。

わに丸は生まれたときから心臓が悪かった。
治りそうもないので五歳で手術に踏み切った。
じいじは、その時のことを思えば自分は大丈夫だという。

すっかり図体が大きくなったわに丸。
ちいさいときには手術の跡が大きくあり、しかも胸骨をワイヤーでつないであるため、
胸が縦一直線に張り出してまるで尖った鳩の胸のようだった。
 術後は眠りにつくとコワイモノが現れ、鳥のようにけたたましく鳴く夜がひと月続いた。
コワイモノがいったい何なのか、退治してやろうにもわに丸は幼すぎてただ泣いて鳴く。
 王様はわに丸が寝入る頃に病室にやってくる。
鳥になったわに丸をかかえて病室を飛び出し、人間にもどるまで
人気(ひとけ)のないところで抱きしめ続ける、わたしの毎夜の闘いを励ましに。
 経過が良好だと判断されると最後の処置がなされる。
心臓に、じかに電気ショックを与えるために、抜糸後も残しておいた肋骨下の
ワイヤーの引き抜きだ。
処置室の奥から、かすかな悲鳴。
泣きながら乗り越えたのに、小学校の体育の時間に、
心無いいじめ、「人造人間」には、わたしも泣いた。

そのときのことを思えば、、、
ちいさな頃からじいじに、風呂でからだをつるつるに洗ってもらっていたわに丸。
入院前夜、わに丸は生まれて初めてじいじの背中を流した。
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by NOONE-sei | 2004-12-05 20:24 | 百夜話 父のお話(19) | Comments(13)
Commented at 2004-12-07 22:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by NOONE-sei at 2004-12-07 23:18
コメントに感謝です。
最近、内容が暗くてねぇ、、、。
懲りずにどうぞまたお立ち寄りくださいな。
Commented at 2005-03-31 16:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by NOONE-sei at 2005-03-31 20:15
『鍵コメントさん』へ
ようこそおいでくださいました。そして、わに丸に心を寄り添わせてくだすって、
ほんとうにありがとうございました。
からだも痛いけれど、心も痛い。
そんな代われるものなら代わってやりたいような強烈な体験を
『鍵コメントさん』もよく乗り越えられましたね、えらかったね。
・・このお返事を読んでいただけることを願って、、、。    セイより
Commented at 2005-03-31 21:17 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by NOONE-sei at 2005-03-31 23:48
ひとりで苦しみを感じ続けるのはとてもつらいことです。
わに丸はあまりの苦しみに、当時のことを覚えていません。
というよりも、忘れるしか手だてがない程の壮絶な日々だったのだと思います。
大人と子供の乗り越え方には違いがあるけれど、それはただの痛みではなく心の苦痛がともなうという所では同じだと思います。
大人の心の傷は癒えるのに時間がかかります。
つらくなったら、またおいでくださいませ、、、。
Commented by sol at 2005-04-01 03:36 x
お医者さまは手術をして病気を治すことは出来るけれど、そのことによって背負ってしまった苦痛については全く気付いておられないことと思います。もちろん話す勇気も無く、押し込めば押し込むほど心の中で大きく膨らんでしまいます。こんな場所で見知らぬ方に心の内を告白し、優しい言葉をかけて頂けるとは。弱音ばかり吐いていないで、しっかりと前を向いて生きて行かねばという気持ちになります。ありがとうございます。また時々訪問させて頂きます。
Commented by NOONE-sei at 2005-04-01 12:31
ほんのわずかでも、なにかしらのお役に立てたのなら、
こうして出会った意味があったのだと思います。
手術の跡を見るとき、痛かったことや泣いたことやいじめられたことが
よみがえらないようにと、わたしはわに丸におまじないを教えました。
「これはがんばった勲章だよ、えらかったね」って。
たとえ今、弱音が出ても、それでもsolさん、あなたもえらいえらい。
よくがんばったね。
Commented by sol at 2005-04-01 20:37 x
私はもう大人であるというのに、何だか私にもおまじないの言葉を言ってもらっている気がして、恥ずかしいですが泣いてしまいました。病気をするということは傷跡よりも心に深い傷を負うことなのだなと改めて知りました。元気だった頃の私が知り得ない気づきです。辛い気持ちもいつかは自分の糧として戻ってくればと思っています。ありがとうございました。
Commented by NOONE-sei at 2005-04-02 00:31
心が痛かったのだ、そう認めるところから回復は始まるのじゃないかな、と思うのです。
ちゃんと認めて受け入れて、そうして今度はsolさんが
誰かの役に立てる、、、。
そういう日がきっとくることを信じて、このやりとりを終えたいと思います。
どうぞしあわせを手にしてくださいませ。祈っています。
Commented by sol at 2005-04-02 02:20 x
沢山のお言葉をどうもありがとうございました。
Commented by NOONE-sei at 2005-04-02 09:14
こちらこそ、このようなへんぴなところで細々とやっているブログに
訪ねてきてくださって、思い切ってコメントしてくださって、
ありがとうございました。
また読みにいらしてくださいな♪
Commented by sol at 2005-04-03 22:02 x
弱音ばかり吐く私を心の底から支えてくれたのは、もうとっくの昔に追い越したと思っていた母の強さです。私は結局母親の分身なのだとこの時知りました。ここでもそんな心強さを与えられた気がします。また時々思い出して訪れさせて頂きます。本当にありがとうございました。
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