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45夜 はっけよい


45夜は、シコふんじゃった、ということで。

映画「シコふんじゃった」は、元気が出る。
まるで「ウォーターボーイズ」の原形を見るようなこの映画にはカタルシスがある。
最後の場面で、詩篇を詠むような相撲へのオマージュの語り、それを聴きながら
画面に力士達の薄桃に色づいた体から湯気が立ち上るのを観ると、神々しささえ感じる。

でも今夜は映画のお話じゃない。
おしりのお話。

37夜はこどものおしりのお話だった。
この地は今、桃がたわわ、こどものおしりのような桃がいっぱいだ。
わたしが初めてこんなおしりに出会ったのは、ちいさな良い子だった頃。

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この子が登場する物語のお題は「小さい水の精」。
水車小屋の池の底の、小さな家に生まれた水の精が経験する、冒険や出会いの物語だ。
好奇心旺盛なこの子、かくれんぼは水草の茂み、探検はコイの背中に乗って。

ある晩、お父さん水の精が水の上の草原に連れて行ってくれた。
ハープに合わせて踊るたくさんの霧の精が、漂い溶け合ってひとつになり、離れ消えてゆくさまを見た。
丘のむこうからぼんやりと空にさしのぼり、丸いものがヤナギにひっかかる。
手を伸ばしても取れないそれを「月」だと、初めて知る水の精。輝く銀の夜だった。

やがて、水から上がって人間達をながめるようになり、いたずらするようになり、
水の精は人間の子ども達と出会う。

友達になった子ども達は「小箱の稲妻」で「石」を焼いて食べる。
水の精は、おいしい「石」焼いものお礼に、選り抜きのご馳走、ヒキガエルの卵を持って行ったが、
だれも食べてくれないことが不思議。
でもきれいさっぱり諦めて、綺麗な貝を持って行ったら、みんな喜んだ。
今度は、もらった「小箱の稲妻」マッチで、水の中でコイに火を点けてみせようとしたのだが、うまくいかない。
コイは人間の子に騙されたのだと言った。
水の精はそう思えない。子ども達も考える。ひとりが言う。
騙そうなんて気持ちはこれっぽちもない。
けど、水に濡れたらマッチはだめになってしまう、それはどうしようもないことなんだ。
マッチの箱にミミズを詰めて贈り物としてコイに渡せば、そんなにきらいだと思わないでくれるんじゃないかな。

毎日が楽しかったけれど、季節は変わる。
ある朝、子ども達に会うために水から上がろうとしたら、鼻の先が何かにぶつかった。
水車の池に、氷が張ったから。
起きたばかりなのに、お父さん水の精は、もう眠る時が来たと言う。
「は・る・ま・で、、、。」という言葉を繰り返すと、今日までのありとあらゆることが、
ひと冬の間、夢に見ていても飽きないくらいに素敵だったと思えてくる。
お母さん水の精の「おやすみなさい」という声を眠りの淵で聞きながら、春までおやすみ、、、こんなあらすじ。

この本は、挿絵 ウィニー・ガイラー、訳 大塚勇三。絵が奇妙だ。
この本の挿絵で描かれる水の精には、甘さがない。そこがとてもいい。
ともすれば大人というものは、子どもというものに、甘くあどけなく清らかな天使像を重ねる。
子どもは姿も形もバランスが悪く、時に表情は奇妙で、だから面白くてかわいいのに。
ちいさいわたしは、この水の精の不気味な顔を奇妙と感じ、まるいおしりが好きだった。

わに丸にもおしりにまつわる思い出がある。

風呂上りの子どものおしりはかるかるだ。
体を拭いてやろうとしても、からケツで逃げ回るから、わたしは「どすこい!」と声を懸ける。
するとびたっと動きをやめて自分でおしりを拭き始める。相撲の準備だからだ。
手拭いは「まわし」。ふんどしじゃない。

「はっけよい」の前に、することがある。「みはってみはって!」
本当は見合って見合って。犬が鼻に皺を寄せるのとおんなじ顔をする。
「はっけよい」「のこったのこった」
すっかりその気になっている力士「わに丸山」。・・ケツが青いぞ、蒙古斑。

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まだ外に出たことがない水の精。産着みたいなエプロン。このおしりがかわいい。

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春まで眠るために着替える水の精。やっぱりおしり。

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オトフリート・プロイスラー作 この本が最初の創作童話。後の「小さい魔女」が有名かな。


37夜
by NOONE-sei | 2005-09-09 00:13 | 趣味の書庫話(→タグへ)


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