7夜 目は口ほどに


大学も被災して損壊した建物があるので、授業計画が組み直されていて、
わたしのような聴講生の受け入れは無理かと思っていた。
五月から授業を開始するという。
がんばろうという気分になって、急ぎ、手続きに行った。

震災以来、初めて駅から昼の町を歩いたら、美しかった蔵が崩れたり、
みっともないほど景観が町にそぐわなくて嫌いだったマンションの土台がひび割れたり、
通りの隆起や亀裂や陥没の痕を見た。
それでも店は四月からほとんど平常運転に近くなっていた。
この地のいくつかある大学では、他県からの入学辞退者が多数出た。
それでも在学中の学生は戻ってきつつある。

今年度受講するのは、認知心理学。
認知症における認知じゃなくて、脳内で変換して理解される錯視の話。
脳内変換という言葉がわたしは好きじゃないんだが、
脳内で行なわれる認知へのメカニズムは、学問としてならおもしろいと思わないか?

目は口ほどにものを言い 

口は多くのことを言い間違う罪作りな器官だ。
目は嘘をつかないけれども見間違いはある。

街並みを歩きながら、おや、と思うものを見つけた。
たくさんののぼりが風にたなびいて立っている。
「がんばろう、本日」

日の丸に、本日。

いわずもがな、「がんばろう、日本」 は、
鰐号が毎日甲子園春の大会を映像観戦していたからよくわかっている。
日本は裏返しにすると本日なのだな。今日、初めて知った。

目は口ほどに見間違う、錯視もなかなかいいじゃないか?



□春のお写真
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四月になったら花の入荷が増えた。
本日入荷したばかり、というミニバラを買って窓辺に置いてみた。


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強い余震の前日は中学校の入学式だった。だから余計にきのうの強い余震にはくじけそうだった。

入学式のために、母親たちも美容院に行ったので美容院は大忙し。
この地でいちばん美味しいケーキ屋も四月から平常に近い営業。
ケーキ屋も大忙し。みんな美味しいものに飢えていた。
ぴかぴかの制服。ぴかぴかの一年生と同じ店内でケーキを買うのが嬉しかった。
もちろん、ケーキを食べることもとびきりの嬉しさだったけれど。

じつはこの店のフルーツがたっぷり載っているケーキをもう食べた。
四月に入ってすぐに、いつもお茶を飲みに行っていた店の誕生祝をしに行った。
震災以来閉めていて、消沈していた店主を驚かせようという女友達二人の企み。
ほんとうなら、いまごろ三周年記念の献立で美味しいごはんを出しているところだった。
気持ちが奮わなければ店を開ける気にはならないだろうけれど、
ケーキには魔力があるから、それをとにかく一緒に食べよう、この地でいちばんのケーキにしよう。
おめでとうの歌を歌ったら、泣かせてしまったけれど、
こんな涙を幾度も流して、そしてもういちどお店を開けて欲しい。
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by noone-sei | 2011-04-10 00:10


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