97夜 香の箱


一度だけ、香を聞かせてもらったことがある。
香道と言うのか聞香と言うのか、そしてそれは茶のようにお手前と言うのか。
なにしろ知らない世界のことなので、言葉の使い方もわからない。
沈香とはなんだろう?そのときは伽羅の香りが印象的だった。

十五日は小正月、十四日は寺社で焚き上げをするので、松の内もおしまい。
七草粥を食して七日に松飾りを外す家も近頃では多いが、
焚き上げまでが松の内と言うほうが、なんだかしっくりするのだけれど。

今夜のおはなしは、焚き上げの火と香炉で使う火を掛けているわけじゃない。
昨年の神事や仏事のもの、お守り、正月飾りなどをまとめて、焚き上げの準備をした。
すぐに持ってゆけるようにと駐車場に面した父の材木置き場の戸を開けたら、
木が積み上げられている上に、白っぽいものがいた。
「・・・誰?」
それは猫だった。

ブチ コ もアク コ もいなくなって日が過ぎた。
天井裏をネズミが走った時には猫を飼いたいと思ったけれども、それももう落ち着いている。
猫のいない暮らしに慣れていたから、目に映った猫の姿と猫という言葉が繋がらなかった。
それで出た言葉が「・・・誰?」。猫は座っていた。

猫が姿勢を低くし、前足を内側に折り曲げて足先を隠して座っている姿を、香箱と呼ぶそうな。
香箱とはたいへんに美しい言葉。
座る姿は香箱のようにと言うのか、香箱になっていると言うのか。
なにしろ知らない世界のことなので、言葉の使い方がわからない。

答えは、香箱を「組む」もしくは「作る」。うーん、美しい。
今夜は、器量こそ良くないがたくさん思い出をくれたクロとブチ コ とアク コ の夢が見たい。



□山の中の料理屋で見かけた猫
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香箱を組んでいる。動詞的用法をしてみたよ。


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なんだこれは。こんな姿を「猫が落ちている」と言うんだそうだが、犬もこうなる。
今は冬なので、うちの犬は猫のようにこたつで丸くなっている。
シワ コ は人から離れているのだが、ペロ コ は人の膝に乗ったりこたつにもぐり猫化している。


もうひとつの素敵な香箱
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by noone-sei | 2011-01-10 00:10


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