83夜 知の愉しみ


とても根源的なことを言うのだけれども、「本」ってなんだ?
紙?活字?手書きの印刷物?絵?写真? ・・では内容はどうだ?

自分にとっての「本」の定義って、考えたことがなかった。
本との初めの出会いは物語で、その後、小説や評論を読むようになっても、
ひとりの時間をくれるものという意味では漫画も価値が等しい。
映画を観ることももしかしたら価値は等しい。
音楽は背景音なのですこしちがう。

本をほとんど読まない、と時々書いてきたが、
活字であれ手書きであれ、紙に印刷してあるものには引っ張られる。
しかし定義を考えてみたら、まったく引っ張られないものがあった。
心理面やビジネス面を強化するための印刷物。
「強い自分の作り方」とか「自分に負けない方法」とか「美しく生きるために」とか
「夢はかなう」とか「夢はかなえる」とか「やる気への戦略」とか・・
適当に題名を付けてみたら無数にありそうだ。

覇気を得ることをはっきりと目的にして何かを読むということがない。
結果的に覇気を得たとしても、初めから装置として「本」が存在したことがない。
美しくてどこかすこし甘やかで、それでいてきりりとしたところがあって、
装丁や意匠が知への小さな入り口になっていて、手に取ったときに既にある昂揚感。
読み終えて起こる思いがけない情動が、本がもたらす愉しみ。
あらためて考えてみると、まったく引っ張られない印刷物はわたしの「本」の範疇になかった。
それらは服を着たまま風呂に入るような感じに似ている。




□本博
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先月末に、ここを会場にして本のイベントがあった。ここはわたしが通う聴講生二年目の大学。



■催しのうちのひとつ トークライブ 
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授業や講義は受けるが、人の講演は人生訓が入り退屈なのでほとんど聴かない。けれどもこの講演はたいそう面白かった。
上:ブックカフェ。棚に袋に閉じてある本が並んでいる。
下:カフェ。ケーキセットと同じようにメニューに文庫本のセットがある。

内沼晋太郎



■催しのうちのひとつ 一箱古本市
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一箱古本市に出店。ぜんぜん振るわなかったので、編み物をしながらのんびり店番。この本はイギリスで書かれた絵本。誰かが面白がってくれると思ったのだけれど。


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めずらしいことに王様が初出店。
踊りや舞台の本、岡本綺堂、四谷シモン、中井英夫などなど。そのほか、わたしは本を読まないのでよく知らない本。
こちらもぜんぜん振るわなかった。誰かにとってはきらきらした本でも必要としない誰かにとっては視界に入らないということがある。「百人にひとりがいるのかな、と思って一箱古本市に出てみたんだけど、ぼくのセレクトは百人にひとりもいなかったんだねぇ」と王様は自分の趣味を客観的に分析、くすくす。



■ごほうび
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弁当への取り組みが紹介された本にちなみ、実際に弁当のおかずが披露された。弁当は親が子に伝える文化だと思っていたら、子どもが自分で弁当を作れるように教育していくのだって。それって、親に期待できなくなっても、子が自力で文化を継承できるということ?

むずかしいことはわからないけれども、披露ののちに余ったおかずを戴いたので嬉しい。弁当作りのチャンピオンが作った美味しいおかず、いろいろ。二日間の参加をねぎらってもらったような気がする。
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by noone-sei | 2010-11-02 02:35 | 趣味の書庫話(→タグへ) | Comments(11)
Commented by ムメイ at 2010-11-02 12:03 x
岡本綺堂に四谷シモン、古本市にあったら絶対買ってます。
私101人目(笑)
自己啓発を目的にした出版物があんなに商売になるのって
1冊読んでも満たされなくて次を買うからですかね。
他方で面白い小説が絶版になるし。むー。
だから古本屋さんで欲しい本を探すのです。
Commented by ろここ at 2010-11-02 16:37 x
こんにちは。
私にとっては本は、ここに居ながらにして旅が出来るようなものです。
ここにいるのに東京や福島や外国に行けたり。
過去や未来、自分の中や宇宙や、どこにも無い世界にまで。
小説はいくらでも無限に想像を膨らませることが出来るところが好きです。
漫画や映画は、私が想像出来なかった(想像を超えた)物を見せてくれるので感動します。

お弁当のおかずが美味しそうですね〜。
こんなおかずが一つの箱に詰まっているとわくわくしますね。
Commented by at 2010-11-02 19:03 x
今回、最多販売卓は一日で45冊!
やはり自己啓発本中心でした orz
自己啓発ネタを求めて来た人がそれほど多かったということ。
逆に、今回の講師陣はそれを変えたいと思っている人たちなんだけど
なかなかそうならないジレンマもあるようです。。。

きっと二階でやっていた出版塾は面白かったと思う。
だって、講師が素面じゃないんだもの(笑)

>親に期待できなくなっても、子が自力で文化を継承できるということ?
文化以前の問題として、子供が自立できるように
食という足がかりを固めるということ。
その足がかりがないと、文化まで手が届かない。
食をめぐる現状は予想以上に深刻
Commented by mica at 2010-11-02 19:31 x
岡本綺堂に四谷シモン、わたしも買いますよ!
102人目ですね♪
Commented by noone-sei at 2010-11-03 02:09
ムメイさん、
おー、嬉しいことを言ってくださる。
王様が喜んで木にのぼります(笑)101人目♪101人目♪

そうか、ああいうのの総称はなにかな、と思っていました。
自己啓発の出版物っていうんですね?ふぅぅん、なんかアヤシイ。
人の弱みというのが見え隠れしちゃう。・・少しムッとしちゃう。
心理学各分野を学問として学んでいると、「共感と適度な距離感」という
つまり時間をかける技術を知ってゆくわけです。
だから乱暴な信号を感じちゃうのかな。
>1冊読んでも満たされなくて次を買うからですかね。
端的だと思います。

ムメイさんがupする本の感想を読むの、好きです。
Commented by noone-sei at 2010-11-03 02:24
ろここちゃん、
びっくりしました~。
それはねー、古本市のことで王様と本の話をしたら、
ろここちゃんとほぼそっくり同じことを言ってたからなのです。
つながっているようでなんだか嬉しいです。
そう、無限ですよね。本ってあんなに小さいのに不思議だなぁ。
本の中はこっちから見たらパラレルワールドかもしれない!
う、いかん、ついSF風に・・

このわくわくおかずの製作者は!
坊さんでありますよーー。

Commented by noone-sei at 2010-11-03 02:35
坊さん、
おつかれさまでしたー。
あいにくの雨で、連動して企画されていた広場でのライブが中止になったり、
いろいろたいへんだったようですねー。

そうかぁ。ということは、自己啓発の出版物
(あくまでもわたしの定規だと「本」とは言いたくない)
を世の中は求めているんでしょうかね。
重いはなしだなぁ。

食をめぐる深刻さは、PTAのお母さんやお母さんOBたちからも聞きます。
「日本を救うのはおにぎりだよ、セイさん!」と言い切った方もいました。
そしてそのおにぎりが日本のコメの消費をやっと支えているのだとか。

ともあれ、ごちになりました。おいしゅうございました♪ぺこり
Commented by noone-sei at 2010-11-03 02:45
micaさん、
おぉぉ、102人目!!王様が泣いてよろこびます。
場を読んで本を選択して目標金額を定めた出店者ももちろんいてね、
王様はひそかにどんな立ち居地で自分は初出店に臨めばいいんだろう、って
あれこれ考えたらしいです。
でも~、あんなにお客のニーズと
自分たちのセレクトが開いてるとは思わなかったー
だからね、micaさんの102人目は大切に思えるですよ。
Commented by ひす at 2010-11-03 15:47 x
北杜夫の本に、「本を読むことに情熱を燃やす友人」が出てきまして、
当初彼はほんの冊数を数えそれを記録しておりましたが、
次第に「分厚い本を読むほうが不利じゃないか?」と気になりだし、
ページ数を数えだし、次には
「同じページ数でも活字の大きさで文字数が変わってしまうではないか!
ついには活字の大きさまで気になるようになり、
最終的には、自分が読んだ活字の数をページに書き留めるというオチでした。
丁度それを読んだのが、小学生の時で、
私も1冊でも多くの本を読もうと思っている最中でしたから、
なんだか身につまされ、以来、気に入った本はゆっくり何度でも、
気に入らなかった本は途中で読むのを止める。
そういう風に変わっていきました。
だから、形や他人の評価はどうあれ、
自分が気に入り、いくらかみになったものについては、
胸をはって「本!」
だから、梶井基次郎も、吾妻ひでおも、ムンクやミュシャの画集も、
アイドルの写真集も、HISの旅行パンフレットも、
等しく本の範疇なんですよ。
だから「知」とは少し意味合いが違ってくるな~。(=^^=)ゞ


Commented by ひす at 2010-11-03 15:47 x
私は普段本はなるべく近所の個人経営の本屋さんで買おうと思っているんですが、
取り寄せできない本も多々あり、
ああいう小さな本屋さんは、もはや雑誌屋さんになってしまったのだなぁと…
だから今日もアマゾン・・?
う~ん、微妙・・
Commented by noone-sei at 2010-11-05 00:43
ひすさん、
その北杜夫の本は未読ですが、いかにも北杜夫っぽい。
ひとそれぞれに「本の範疇」ってありますよね。
それにしても、旅行パンフレットも本かいっ!わはは
それ以外のラインナップはもちろん「本」の王道ではないですか!
「知」の愉しみについて。
「知」って、本から得る知識も含めるけど、それだけじゃない。
なんというのかな。もっとこう、動物的な喜びというか、
うーーん、言葉では伝えられません~~

アマゾンねぇ。わたしはセブンネットかな、、、。
アマゾン、強いですよね。
わたしは「うろんな客」をネットも含めてあちこち探し、
結局アマゾンでという苦い経験があるです。
まったく微妙ですよ、まずわたしにしたらアマゾンも「本屋」じゃないし!
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