43夜 茶うけ


高校受験のときに世話になった家庭教師は男子学生で、実家が新宿の繁華街にあった。
この地どころか東北に来たのは大学に入ってからだったので、
地域による違いには驚くことばかりだった。
雪の轍(わだち)を見たのも初めてで、雪の恐さを知らないから、
年明けから二月終わりまでが最高に寒く雪も多いのに、原付バイクが移動手段だった。

彼が東北に来て驚いたことは数々あったが、
彼の驚き第一位はこの地の茶うけだった。
菓子ではなく梅干しに砂糖をかけて供された時にはひっくりかえった。

「上がりな」は、家にお上がりなさい、と、お茶でもおあがりなさい、の、ふたつの意味を持つ。
上がりな、と上げてもらって茶をよばれたら、
漬物と、そして梅干しに白砂糖がかかった皿が供された。
彼にとっては珍味ではなく珍妙な味、馴染みあるはずのものが、馴染みない姿で現れた。

今でこそ梅干しは塩気少なく甘い仕上がりだけれど、
昔の梅干しはしょっぱくて酸っぱかった。
だから砂糖をかけるのか、というと意味はひとつではない。
年寄りの家では、梅干しに砂糖をかけて茶うけにするのは当たり前のことだった。
茶受けには甘いものとしょっぱいものを出さねばならない。
漬物でしょっぱいもの、梅干しに砂糖で甘いもの。
砂糖は高価で上等な甘いものだった。

この地にいる間、彼はついに梅干しの茶うけには馴染まないでしまった。
東京に戻ってずいぶんと日が経つ。
けれど、ときどきは思い出してみてほしいような気がする。
あの紅い色のついた白い砂糖の味を。

                          * *


■ある日のわが家の茶うけ 試し撮り
c0002408_1484288.jpg
来客があったので、いい天気の午後、窓際レースカーテン越しの陽で撮ってみた。
絞り優先。お花マークにズーム。パタリロまかせだと横の数字が自動的に8.0になるところ、
ダイヤルをぐりぐりして6.3で撮り、赤味を少し加えて色加工。 
・・ところでこの、8とか6っていう数字は、なに?
自分でやっていることがさっぱりわかりません・・。
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by noone-sei | 2010-02-02 01:40


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