22夜 東京散歩 壱 


王様には盆休みがないので、旧の七夕に王様の母の墓参に行った。
いつもは日帰りなのだけれど、この度は一泊することにしたので、
ほんの数時間だけれど都内に足を伸ばした。

ほんの数時間。その上京はわたしひとり弥次喜多道中だった。
王様の実家から、都内にゆくならこれが便利だからと、
緑のカードを手渡されたのだが、スイカというそれをどう使ったらいいのかわからない。

 「これはなに?」
 「スイカっていうカード。」
 
 「切符?」
 「切符を買わなくてもいいんだよ。」

 「これをどうするの?」
 「見せるんだよ。」

 「誰に?」
 「・・機械に。 ・・きみは仙人か。」

そのカードは王様が預かって、駅の改札でわたしに渡す。
機械に見せるとシャキンと扉が開いて改札を通ることができる。
つまり、機械にカードをかざすと読み取るということだったのだな。

東京では観たい建物があって、いつかの機会にはと以前から思っていた。
それは丸の内の明治生命館という、近代建築なのだけれど、
大手町から東京駅の近くまで歩くにつれ、なんとなく懐かしい景色になって、不思議な気分になった。
大手町でわたしは一年近くアルバイトをしていて、昼は弁当を持って皇居に行ったりしていたのだ。
思えばどの街より、丸の内のオフィス街はゆったりとして、のんびりしたわたしには居心地が良かったっけ。

当時のわたしは近代建築にはまったく興味がなくて、
日曜日の昼下がりに丸ビル界隈を散歩しようなどという気にはならなかったし、
思いつきもしなかったのだけれど、
平日に働く街としてだけでなく、今では買い物や散歩のできる街なのだと初めて知った。
信号がない緑の並木道には、気持ちのいい風が吹いていた。

目は開いていても見えていなかったのだから、あの頃のわたしの改札機は閉じていた。
街というものを 視点を変えて読み取ることなど、到底できなかっただろうな。
そうそう、あの頃はスイカというカードなんてまだなかったんだっけ。



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カードはこの機械に見せる。



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地下鉄をここで降りて歩いた。


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電車の中吊り広告も楽しいけれど、
駅の通路を歩きながら見るポスターも楽しい。


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地図を見ながら出口を探す。
出口をまちがうと、どこにいるのか、わからなくなってしまう。


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皇居の向かい側の駅入り口。
このすぐ近くが明治生命館。
お写真は次の夜に。
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by noone-sei | 2009-08-11 02:27 | 東京散歩(5)


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