5夜 贈られもの


時間がゆっくり流れているのはわたしだけか?
七月に書いたおはなしを寝かせたまま、九月の秋彼岸になってから載せた4夜から三ヶ月が過ぎた。

四月 花の盛りにはなちゃんが旅立ち、
七月 家族のご苦労さま会をしようと、鰐号に連れられて台湾に行った。
八月 人寄せやら仏事に追われる盆が過ぎ、
九月 秋彼岸を終えてから、それまでずっと離れていた浮世に戻った。

浮世は魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する怖ろしいところなので、
ひとりでこつこつと家の片づけに明け暮れ、譲り受けた家を機能させるのに忙しく暮らしていた。
そのようにして月日が過ぎて、やっとはなちゃんとの別れのおはなしを載せたのだけれども、
その間にも、わが家には大きな出来事があった。
子犬が来たのだ。
これを贈られものととらえよう。
子犬は八月二十八日に来た。その時の月齢は約三か月。

はなちゃんの葬儀と初七日を過ぎたあたりから、鰐号が、プロジェクトDを発動しようと言い始めた。
プロジェクトCでもいいんだがやっぱりDだろうと言う。

遠くの親戚より近くの他人というがその通りで、わたしはこの五年間多くの他人に世話になった。
だれがわたしたち家族を支えたかといったら、言葉では挙げきれないほどの多くのひとが
わたしたちに関わってくれた。
そのありがたい他人さまたちがみな、Dの発動を心待ちにしてくれた。
Dとはdog、Cとはcatのことである。

この子犬についてはまたこの次に書くこととして、まず紹介しなければ。
「王様の千と線」の登場人物、じゃなかった、新入りが入ったのだから。
名をビー コ と名付けた。 


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赤ん坊の時、保護主の所で。

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兄弟七匹で保護され、うち雌はビー コ のみ。

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三ヶ月、保護主から譲渡されてすぐ。

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わが家にて。

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すでに柴犬くらいの大きさだけれど、まだ子犬。
九月からのビー コ の成長はまたこの次に。



さ、イヴだね。
鰐号のスペイン土産のワインで乾杯しよう。
ありあわせのものばかりだけど、みんなでイヴの卓を囲んだら楽しい。
犬も猫も、新入りの犬になりたての贈られものも。

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# by NOONE-sei | 2016-12-25 01:11

4夜 人の噂も七十五日



ほんとうは七月にこのおはなしを書いていたのだけれど、カギをかけてしまっておいたよ。
はなちゃんは四月十七日にみまかりました。
案じてくれたかたがた、見守ってくれたかたがた、応援してくれたかたがたに深く感謝します。
そして、身内ではありますが、ずっとはなちゃんのそばにいてくれたペロ コ とテン コ に感謝します。
四月十七日はシワ コ の誕生日でした。
符牒を合わせようなどとは思わないけれども、なんとも不思議なことです。




人の噂も七十五日とは、世間で人があれこれ噂をしていても、それは長く続くものではなく、
やがて自然に忘れ去られてしまうものだということ。

忘れたいこと、忘れられないこと、忘れたほうがいいこと、忘れないほうがいいこと。

はなちゃんが父のもとへ去って、七十五日が経った。
毎日朝夕はヘルパーさんが車椅子に乗せて庭を見せたり庭に押していってくれたりしていて、
その晩にはいつものように梅酒を飲んで元気におやすみを言ったのに、
朝様子を見ると呼吸が止まってすぐだった。
そんなふうに呼吸に異状が起こり、すぐに吸引して持ち直させることがそれまでも数度あったけれど、
今度は引っ張り上げることができなかった。
救急車は呼ばず、家で蘇生の手を尽くし、お医者の指示を片手に持った電話で受けながら
「心臓を押すその手を止めなさい。はなこさんもう充分にがんばった。きっと苦しくなかったよ。」
そう言われてやっと引き戻せないことを知った。



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今日は秋の彼岸。庭の彼岸花が真っ赤に咲いている。
もうそろそろはなちゃんにお別れをいわなくちゃ。

はなちゃん、さよなら。
おとうさんがずっと待っていた安達太良山に行ったんだね。




     
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# by NOONE-sei | 2016-07-01 03:34

3夜 梅雨だから 


暑かったりひんやりと涼しかったり、気温の変化が厳しい。
草木がどんどん伸びるので、庭の手入れをしていたら日に焼けて真っ黒になった。
海に行ったと見栄を張ろうかな。


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花が咲くとうれしい。


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今年の玉ねぎの収穫はすばらしい。王様が気を良くしている。


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犬は草を食うのに忙しい。


海ではないのだけれど、ちょっとでかけてきます。
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# by NOONE-sei | 2016-06-30 23:43

2夜 どっちつかずの夜


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お写真は昨年初夏の蔵王高原、ヤギと跳ねる子どもたち。
ちょうどその頃は、東北各地の山の噴火が危ぶまれたり地震が起こったりした時期で、観光地は客足が遠のき静かだった。

地震には、3.11から長く続いた余震で徐々に体が強く反応してしまうようになって久しい。
自然界の変動は突然やってきたり息をひそめたりする。
昨年までは、3.11が近づくと地震の数が増えて、忘れるな、と思い知らされていた。
だから今年の3.11もきっとそうなのだと構えていたらちがった。
数日前に久々に地震はあったものの、ごく小さなものだった。
自然界というものはあまりに大きすぎて、抗うということができない。
構えると肩透かしを食わされ、忘れかけていると気まぐれのように恐いものを突きつけてくる。

抗えないならどうする?小さく丸くなって耐える?変動が行き過ぎるのを物陰から待つ?
できることはないのか考えながらまっすぐに見据える?
人間の微力でどうにもできないものをどうにかできるようなつもりになった驕(おご)りが、
原発の再びの稼動を始めさせていて恐ろしい。
わたしたちが生きている間に鎮めることのできないものが、この地ではあちこちに積み上げられている。
除染作業がまだ続いていて、剥がした表土はシートを被せて敷地に置き、
美観を甚だしく損ねつつ恐ろしい存在主張をし、またはシートで覆って土中に埋めている。
放射能に汚染された土は鎮められたのではなく、長い時間、いや気の遠くなる年月隔離しておくだけだ。

気の遠くなる年月だとわかっているのに、原発で避難して故郷に帰れないままの人たちに、
もうあそこには戻れないんだと告知しないのはなぜなんだろう。
いつまでも故郷を思い、仮の地と馴染むことのない人々が大勢近くに住んでいる。

ちかごろ、苛々して人に当たる人に遭遇することが幾度かあり、
そういう人の心根までは到底わからないけれども、
その反射に近い苛立った言動が浅ましく人を傷つけるのを見過ごせず、
近寄っていって「そんなに怒んないの。ね。」と声を掛けてしまったことがある。
日々の生活の中で蓄積されたものか、環境が思い通りにゆかない悲嘆か、いずれにしても
自分で自分の発露が止められない哀れないきものになってしまいそうな時、彼または彼女は声を出す。
そんなせっぱつまった声をとどめようとするのだから、
わたしは殴られるのを覚悟しているのだが、声掛けをすると彼らは行動だけでなく目までが止まって、
しばらく機能を停止してしまうので、仕方なくそっとその場を離れるしかない。
自然の変動が人の気持ちに揺らぎを与えるのか、大地の揺らぎが不安を煽るのか。
依って立つべき地を持てない寄る辺なさをこの先何年彼らは抱えてゆくのだろう。




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今日は震災から五年と一日目。
震災の傷みはフラッシュバック、原発による不安はフラッシュフォワード。
六年目になってもなおあるこの苦しさや閉塞感は、未来に重くて永い不安を見ているからだ。
過去なのか未来なのか、どっちつかずの昨日を終えてほっとした。
3.11は、理性でなく感情がざわつく日だから。
ことに昨日は朝から、五年前と天候がよく似ていてざわざわした。
こんな日にあの曲は聴きたくないな、と思っていたら聴かずに済んだ。
『見上げてごらん 夜の星を』
何か悲しいことが起こると流れる曲。
わたしには世界でふたつ、嫌いな曲があるんだが、その三番目にこの曲を入れることにした。
ひとつは『四季の歌』ふたつは『千の風になって』その三番目だ。

今日は、五年前にやっと耳が開いた頃に聴こえてきた曲を久しぶりにテレビで聴いた。
ずいぶん前の曲らしいんだが、それをどこでどんな状況で聴いたのかが鮮烈に蘇った。
五年前だって今だって、どっちつかずの日の夜の星は見上げたくない。

SMAP『この瞬間(とき)、きっと夢じゃない』





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今まで外に食べ物を干すのをはばかっていたのだけれど、近隣で除染作業を終えたので干しリンゴを作ってみた。


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リンゴチップスは甘みが凝縮されている。でもリンゴってほとんど水分なのね。


おまけ
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こちらは煮リンゴ。

獣たちの昼寝とはなちゃん
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# by NOONE-sei | 2016-03-12 11:50

1夜 「寒さも忘れる人と、冬を過ごそう。」

 ・メンタルな話なので引き寄せられる人は読まないほうがいい


母、はなちゃんが夏に緊急入院して、退院してから二ヶ月とすこしが過ぎた。
わたしはもうはなちゃんを家に帰したいと言って、病院から自宅に連れて帰った。病院や施設を転々とするよりも、家がいいと思った。
入院していた病院ははなちゃんが「食べる」機能を思い出す訓練を言語聴覚士にさせてくれた。
福祉に関わる大勢の人が計画を立ててくれ、毎日朝夕ヘルパーさんに助けてもらって、家での介護が手厚く受けられるようにできた。
寝たきりになったはなちゃんは、わたしが作るペースト食を食べる。訪問看護師が定期的に家でバイタルチェックをしてくれる。
往診を専門にしているお医者とも出会うことができた。お医者は、急変してもあわてて救急車を呼ばないようにと言った。
このウェブログを長く読んでいる読み手は、おや?と思わないか?父を自宅で看病したことと重ならない?

はなちゃんの介護ベッドの上には毎日ぺろてんが一緒に寝ている。
五年近い介護の中で一番穏やかな日々を過ごしていたのに、今度ははなちゃんの「飲み下す」という機能に異変が起きてしまった。
はなちゃんは認知症とパーキンソン病なので、脳からの食べろという指令が混乱し、飲み下す筋肉がこわばり始めた。
呼吸を確保するために喉に痞(つか)えた痰の吸引が必須で、これができないと自宅介護(看護)が崩壊する。
わたしは父の時にもそうしたように、いや父の時よりも頻繁に、吸引のチューブを使って苦しい息を和らげてやる。
もし、クリスマスになにかを願っていいなら、はなちゃんの意識レベルがすこしでも長く維持できますように、と思う。
意識が混濁し、昏睡するほうが本人は楽かもしれない。けれど、たまに電流がつながるようなわずかな会話の疎通を大切に思う。



                                *    *   *




よし、それじゃ、ささやかな聖なる夜のおはなし。
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クリスマスだね。
こんなカードをもらったよ。
今年は雪がほとんど降らなくて不思議な冬だよ。

ゆっくり絵本を読んでお昼まで過ごしてみる?

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ぶどうといちじくのおやつをどうぞ。


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こんな絵本があったよ。
わたしはこの訳者、村上春樹の小説を一冊も読んだことがない。


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こんなおじさんが登場するおはなし。


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おじさんに災難がいろいろ降りかかる。これを冒険と言っていいのかな?




次は、まど みちおの詩集。
このおじいさんが亡くなって、わたしはとても悲しい。
このひとの詩は胸が、なんというの、きゅんきゅん鳴るというの、きしきしと軋(きし)むというの、とにかく、なにかでいっぱいになる。
だれよりも、何か強いことばやちからで追いかけてきたりしない、静けさのある時間をくれる。

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なつかしい絵かきさん。


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うつくしい詩。





さてっ。お昼だよ。ごはんを食べに行こうよ。

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お昼にはちょうどいいごちそうだったかな?





さてさて。家では獣が待っている。
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獣たちと遊んでいたら夕暮れになってきた。
と思ったら、すっかり夜に。
冬の夜は早くやってくるから、なんだかそわそわしないか?

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獣にもごちそう
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# by NOONE-sei | 2015-12-25 11:59