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93夜 鰐号ぺろ号


脳は鎮まれと言っているのに、五官が騒ぐ。
匂いだったり色だったり気温だったり、
季節が既視感を呼び覚ます。
記念日反応という言葉がある。 ・・アニバーサリー・リアクション。
誰かと別れたり何かを失くしたことを思い出し、大概はメランコリックな気分が伴う。

九月は胸がざわざわした。
十月はもう落ち着かなくなった。
父との別れをなぞる日々が来た。
それは誰しも、当たり前にやってきて、当たり前に流れ込んでくる感情なのに、
わたしには何なのかわからずに、ただ焦り動揺した。

家族がひとり欠けたのだから、わたしは子犬を飼いたいと思っていた。
みんな寂しかった。わたしは泣きそうに悲しかった。
けれど王様が許してくれなければ叶わない。
あるとき、王様が母 西太后に、つい冗談めかして水を向けたものだから、
まずわたしの、次に鰐号の、水が堰を切った。

子犬を探して迎えることになったものの、大きな問題があった。
西太后は犬を飼うことに反対で、わたしたち三人はぐるになって秘密裏にことを進めた。
王様は腹が痛くなるほど西太后にどう告げようかと悩んだけれど、
ついに告げられず、現物を見せてしまおうという乱暴な結論になった。

こういう時、西太后に強い鰐号が、力を発揮する。
「ばーちゃん、大学の近くで見つけたから。犬生まれたって貼り紙。だから貰って来た。」
三人で見に行ったら可愛いから貰ってきちゃった、と、そういうことになった。
探していただとか、どこから来ただとかは、うやむやにしてしまおうと。

西太后はびっくりしたけれど、見たら可愛いに決まっていると、わたしたちは知っていた。
昔、父が趣味で犬の繁殖の犬舎をやっていた頃、
実際に犬たちの世話をしたのは西太后だったから、犬のことはよく知っている。
だからこそ、十分に飼ってやれる状況と自信がなければ賛成しなかったのだ。

子犬が来て数日が過ぎた。
母が子犬にじゃれられて、声を上げて笑った。
もう、子犬は十分にその役を果たしているように思う。

ところでその子犬、大学の近くに居たことにしたからといってお利口かどうか。
・・門前の小僧が経を読むとは限らない。



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わたし:
  ねえシワ コ 、相談があるんだけど。
シワ コ :
  はい。
わたし:
  子犬が来たら、遊んでくれる?
シワ コ :
  はい、いいでしょう。


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アク コ :
  なんにも聞こえない、聞こえないからねっ。


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シワ コ ・アク コ :
  そういうわけで、、、、

はじめまして
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by NOONE-sei | 2008-10-28 02:29

92夜 大地に刺繍する


久しぶりの夜話。

とぼとぼ、ぽつぽつと歩くお話の速さを笑うように、
大地は刺繍を終えた。

安達太良はほんの数日を駆けるように紅く燃え、
裏磐梯は黄金(こがね)に染まった。

秋の足は速い。



今夜は安達太良の、ある日の錦のお写真を。

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by NOONE-sei | 2008-10-26 02:37

ときおりの休息  十三  ウルトラマンのいる飛行場へ


旅もおしまい。
六月にはじめた旅は秋になった。
あのときは小雨だったっけ。

わたしが乗った飛行機は、ウルトラマンの町から飛ぶ。
空港のあちこちにはウルトラなものたちが展示してある。
ちいさな空港だけれど、
ビリケンさんのいる大阪にゆく前に、わくわくするのにはちょうどいい感じ。

今夜は、その空港と飛行機の羽のお写真を。


□空港にて
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空港の外ガラスには、すでにウルトラマンたちがお出迎え。


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おお、たたかっている。
この場合は、戦い?それとも闘い?


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こういうものをジオラマというの?当時の台本もある。


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きれいな色。ウルトラマンには詳しくないので、ただきれいだなぁと見とれるばかり。



□飛行機、その内と外と翼
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貸し切るわけではないが、乗客はごくわずか。


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眼下に見えるのは、本物の日本地図。


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とても美しい羽。翼と言ったほうがいいの?



□帰路の離陸と着陸
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飛行機の離陸のGがいい感じ。


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着陸時の羽って、こんなふうに動いていたのね。

こんなふうにして関西空港からふたたびウルトラマンのいる空港へ。
旅はこれにておしまい。
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by NOONE-sei | 2008-10-20 01:03 | ときおりの休息 壱(14)

ときおりの休息  十二のおまけ  建っていないこと


体重が増えたら、献血に行こうとずっと思っていた。
体重は順調に増えたのに、献血には行かないまま時が過ぎた。
赤十字血液センターの移動献血車でやっと目的を果たせたのは今年の春。
そのとき、真っ赤なイチゴをひとパック貰って気をよくしたのは本当だけれど、
その後、また機会があればと思いながらなかなか献血車に出会わなかった。

夏に鰐号がはたちの誕生日を迎え、「はたちの献血」をすればいいのにと、
献血経験者になったものだからちょと得意げに言ったのがまずかった。
ぷうとふくれたへそまがりは、いまだに献血に行っていない。
高校生のときには、すこし血の気を抜いてもらえば平常心が生まれるだろうにと、
ひそかに思っていたが、口には出さなかった。

今日、献血に行った。
センターから緊急な葉書が来て、△△日に大量に輸血に使ったため
△△型の血液を補充しなくちゃならないという内容だったから。
センターに行くのは十年も前の骨髄バンク登録以来で、
古びた建物が、今では立派な建物に建て替わり、システマチックに機能していた。

初めて献血した時もそうだったが、終わると目の周りが熱くなる。
くらくら来たら立ち止まるように言われた。
しゃがんでしまうのがいちばんなのだとか。
それはいい。現在のわたしにぴったりだ。

血を抜いた人はまずしゃがめ。 ・・血の気が薄いか濃いかは置いといて。
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by NOONE-sei | 2008-10-16 19:37 | ときおりの休息 壱(14)

ときおりの休息  十一のおまけ  100万光年の彼方


ゆうべは、夜の森の美術館で遊んだのか遊ばれたのか。
こんなところで、こんなところが、わたしと遊んでくれた。

山の庭にはJ.A.シーザーの音楽が流れている。
つるっぱ頭で白いお化粧をした、裸の男たちは黒いはかまをはいていて、
美術館の、平たい岩が敷き詰められた広い庭を駆け回る。
ガラス張りの美術館にその影が躍る。
観ているこちらに近づくと、甘い芝居化粧の匂いがしていい気持ち。
はかまを手でたぐって走ると、白い足に白いおしり。
下穿き(ぱんつ)も着けていない。

ゆっくりとゆっくりと、手の中に点った丸い小さな明かりを掲げながら女が踊る。
そうした、広い広い庭の、照明を身に受けた動くオブジェを眺めていればよいかと思ったら、
時が来るまで開かないかばんを持った、外套に黒い帽子の男がわたしたちを組分けする。
「人生はいたずらなもの。」二度と出会えないかもしれないふたつの組。
受付を済ますときから観客は野外劇に巻き込まれており、
すでにわたしの手の中には何もなく、手の甲には黒いスタンプが印されている。

前もって準備させられた懐中電灯を手に、真っ暗な美術館に誘い込まれる。
オペラ歌手が、大きな宇野亜喜良の複製画の前で楽器に合わせて歌っている。
美術館はすべての照明を切って、消防のための非常灯も切って、
懐中電灯だけが蛍のように館内をゆらめく。
天井には柱時計を持った詰襟の少年人形が吊るされていて、時刻は永遠に十時五分だ。
蛍のようなわたしたちは、昼の展示物のひとつひとつを夜の懐中電灯で照らして観る。
内田善美が絵を描いた寺山の絵本、わたしも持っている山下清澄の銅版画「奴婢訓」、
使っていた原稿用紙、舞台の模型、寺山の遺品の数々が浮かび上がる。

奥へ奥へと誘い込まれながら、ときどき柱時計の詰襟の生き人形とすれちがう。
暗闇の奥に赤い明かりが見えると、そこには舞台があって、
昼間は寺山の遺品のようにひっそりしていただろう人のいない舞台が、
機能を取り戻し、照明も装置も小道具も、俳優という人と声を得て本来の姿に息づく。
ここで床に座り、室内劇を観るのかと思ったら、
今度は黒布で目隠しされて、宇宙の小部屋に連れてゆかれる。

なつかしい俳優、根本豊はすぐにわかった。
東北の訛りそのまま、機関銃のように寺山の遺した言葉を散りばめる。
夜の美術館にはあなたが展示されている。
ノーベル賞科学者に発見されたニュートリノだったか?
体の中を突き抜け、一秒間に千も億も細胞から地球の裏側まで吐き出されているのだとか。
それには質量があるとわかり、であれば地球の裏側から宇宙にまで突き抜けたそれは、
われわれのDNAも写し取って宇宙にばらまいているとは考えられないか?
であれば、星の彼方にはわれわれのもうひとつの実像がいて、
それと出会うために、探せ、「100万光年の彼方」劇。

再び目隠しで外の庭に連れてゆかれると、そこにはもうひとつの組のわれわれがいて、
目隠しを手渡し、目が見えなくなった彼らはもうひとつの実像になって小部屋に消えた。
わたしたちはガラスの美術館に戻り、ある者は化粧を施され、ある者は衣装を着けられ、
ある者はネギをかじらされ、ある者は美術館の闇にマッチを擦らされ、
ある者は包帯を顔に巻かれ、ある者はレミング帽をかぶり、蝶の標本箱と柱時計を持って
オペラを聴きながら生きたオブジェになってたたずむ。
懐中電灯の蛍がそれを照らし、寄って離れてゆらめく。

もうひとつのわれわれと、オブジェの魔法の解けたわれわれがふたたび夜の庭で出会う。
夜の森、闇の美術館をさ迷ったのは三時間半。
広い広い庭の劇的空間で迷子たちは自分に戻った、そういうことなのかな。

美術館の企画展、寺山のポスターに、蘭妖子のサインをもらった。
観客にまぎれていたのだけれどね。




                        * * *



追って:
こんな映像が 根本豊 氏のところで紹介されていたので ・・

TVニュース Ⅰ(上演前)
郡山美術館 企画展のTV・CM
TVニュース Ⅱ(上演後)
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by NOONE-sei | 2008-10-06 01:57 | ときおりの休息 壱(14)

ときおりの休息  十一  あやしげな薬


ガマの油売りの口上を聴いたのは幾度かある。
蛙のおばけが鏡に映った自分の姿を見て、汗がたらぁりたらぁり、
その汗を集めたものがガマの油なのだったか?
テレビで見た口上のおじさんは、袴(はかま)をはいてたすきがけ、
髪は五分刈り、手に刀を持っていたような。
自分の腕を切ってみせるのが怖かった。

生で口上を聴いたのは紅テントの花園神社。
芝居を観に来た人々がテントまで並ぶ、その横でお兄さんが口上を述べていた。
テレビのおじさんよりずっと若く、劇団の若い俳優の修行だったが、
だみ声なのはおんなじで、夜の刀が怖かった。

へび売りもいて、ぬめぬめとした長いものを腕に首に巻いて口上を述べる。
刀を当てたガマの油売りの腕よりも、
月夜の刀よりも、
夜に光る長いものが怖かった。


                            * *


今夜は薬の町のちいさな博物館のお写真を。

■道修町 地下鉄北浜駅にて
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地下鉄堺筋線北浜駅を出てきょろきょろしていたらこんな大きな看板が。
ショーウィンドウには、あるある、あやしげな薬。


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動物の剥製、キノコを乾燥させたもの、貝、長いものが入った酒。
美人になる酒、精がつく酒。ガラス越しに臭ってきそうな、あやしい数々。
怖くてカメラも向けられない。


■道修町 くすりの博物館にて
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ちいさな博物館は無料展示で観覧者はわたしひとり。
これは常設の展示、化学薬品の形状いろいろ。


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このときの特集展示は、「流行り病と錦絵」。


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十返舎一九の絵の複製。


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博物館のビルのうしろは神農神社。ビルの一階が社務所になっている。


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絵馬のひとつひとつには、病を治してほしいという願い、医学部や薬学部に合格したいという願い、
医療の研究チームが成功の結果を出したいという願い。


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これが、博物館に鎮座していた神農さん。




なつかしい百夜話 月下の一群
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by NOONE-sei | 2008-10-02 02:33 | ときおりの休息 壱(14)