<   2008年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

70夜 悪いたくらみ


メンタルな話なので引き寄せられる人は読まないほうがいい

c0002408_232303.jpg


黒いのは腹、青いのは血。
悪だくみという言葉は「悪巧み」と変換するのだな。
悪企みではなかったっけ?

母、西太后が父を疎んじるので、
だんだんにわたしの血は青くなった。

このままでは父が父に戻れなくなるので、
だんだんにわたしの腹も黒くなった。

王様と鰐号に相談をもちかけたら、鰐号が一芝居打った。
夜中に西太后の寝込みを襲ってひとこえ。

「ばーちゃん、起きろ。」
「じーちゃんの退院、決まったから。」
「1月31日。」

言うだけ言うと、ばしっと襖を閉めておしまい。
まさに鰐号の本領だった。

企みが巧みだったかどうかは知らないが、
明日から忙しくなる。
[PR]
by NOONE-sei | 2008-01-22 02:34 | 新々々百夜話 父のお話(12)

69夜 決壊


メンタルな話なので引き寄せられる人は読まないほうがいい
c0002408_084112.jpg
 

今日のわたしは大工の梃子(てこ)だった。
手刻みをする木材を あっちにやりこっちにやり、棟梁はなかなか厳しく、
ほんの数センチのずれを許さない。

聞けば夕べから棟梁は工務店と電話のやりとりで忙しく、ナースコールを電話にして
ずっと働きどおしだったという。
あんまり根を詰めるので、しまいに朝方には車椅子に乗って詰め所に居た。
朝、看護士詰め所から連絡をもらい、駆けつけると寝ずの仕事をしていたことを知った。

正月明け、痛みを抑えるために使った薬で今日は痛いという言葉が減っていた。
その薬に替えて十日目の今日、
痛みの軽減と引き換えに、父は人格を失った。

棟梁、職人の仕事には、必ず十時と三時の一服があるから、
一服点けませんか。
[PR]
by NOONE-sei | 2008-01-18 00:34 | 新々々百夜話 父のお話(12)

68夜 読み違え、呼び違え 


自転車には、かごも荷台もない。
ままちゃりともカマキリとも、ごく普通の通学用の自転車ともちょとちがう。
ハンドルが真っ直ぐなのだ。
三段変則ギヤが付いているのだけれど、漕ぐ足がうんと重くなったり
カラカラと軽くなっていっぱい漕がなくては進まなかったりで、
中くらいにしてあとはいじらないことにしている。

病院は町なかなので、月極駐車場に車を置いて自転車に乗り換える。
「月極」って、いつから「つきぎめ」って読めるようになったのかわからない。
「げっきょく」と読み続けていても不思議ではないのに。

途中には県庁があって、ときどき黒塗りの車が続々と入って行く。
県議会が開かれる日なのだろう。
そしていつも信号待ちをする県庁の曲がり角には、「密語橋通り」という道しるべがあって、
「ささやきばしどおり」とルビがふってあり、なにやら言い訳が書いてある。
古い町並みの保存に力を入れてはいるけれど、密談を連想されては困る、とでもいうように。

父の病状の変化についてゆけず、足元に地面がなかった頃のわたしの脳は、
アドレナリンが大量に放出し、ダメージを受けていた。
セロトニンをなにやら調整するのだったか、そういう薬は、気分は安定させるが
やる気については本人の資質に任せて待つのだそうで、わたしは朝の元気が欲しかった。
だから、ドーパミンに作用して元気づけるお薬を飲んでいる。
脳はわがままな臓器で、こうしたお手当てをしてやるとしぶしぶ動く。

父は疼痛管理がうまくいかず、痛みで暴れている。
年末年始の一時帰宅中は、外泊途中で病院に戻るのを嫌がるので、
元旦から毎日、王様とわたしで看護士詰め所に薬を貰いに通ったのだけれど、
いよいよ病院に戻ると高熱と痛みでコントロールが効かなくなってしまった。
しぶしぶでも痛みが和らげば、もうじき家で療養できるのに。

自転車に乗って日に二回、昼食と夕食を一口でも食べるよう見張りに行き、
静かに過ごすのが日課だったけれど、ここしばらく病室は静かでない。
まだ意識も混濁しているので、わたしと鰐号を呼び違える。
帰って鰐号に「じいちゃんは病室で鰐号と暮らしてるらしいんだ」と言ってみた。

その鰐号、じいじの病状から逃げ回って、
じいじに食べさせようと冷蔵庫に入れて置いた好物の腸詰ソーセージを
三本もいっぺんに食って昼寝していたりする。
鰐号、三本分、病室に三日通って働け。

・・とりあえず今朝、病室に顔を出したらしい鰐号、
昼にわたしが行ったら、父は鰐号が来たことを憶えていなかった。
鰐号、あと二回は行かなくては。


c0002408_244176.jpg
以前、観光地で見かけた自転車。
こんなに小さくて、遠くまで走れるんだろうか?
[PR]
by NOONE-sei | 2008-01-15 02:40 | 新々々百夜話 父のお話(12)

67夜 伊達巻き


今夜を写真保管庫にするか67夜にするか、迷った。
迷って決めかねたのだけれど、きまりがつかないまま、またゆるゆるとお話を始めようと思う。

「女の子の食卓」(志村志保子)という漫画がある。
よく訪問するウェブログで教わって以来、大切に読んでいる。
教わらなかったらきっときっと出会うことのない作品だったと思う。

父の病が痛くて、映画も漫画も遠ざかってしまった。
いつだって美しい娯楽をかたわらに置かなくてはいられなかったはずなのに、一変してしまった。
絵空事が虚(むな)しいとかくだらなく感じるとか、そういうことではなく、
娯楽がわたしを呼ばず、わたしの眼は見えず耳は聴こえないというような。

それが少しずつ開いてきた。
寝る前に一編だけ読もうか、という気持ちになって手にしたのが「女の子の食卓」だった。
静かでなにげない挿話が幾つか描かれて一冊の本になっている。
珠玉という言葉があるけれど、ほんとうにそのとおり、ちいさな光を放つ。

挿話のひとつに、ふたりっきりで生きてきた兄妹のお話があって、
兄が結婚してひとりになった妹が、けなげにがんばろうとする。
義姉は華やかで料理上手で、妹に「○○ちゃんてーあんまり料理できないのねー、
そんなに地味なのに料理できなかったらどうやって男つかまえるの?」などと言う。
新婚家庭の邪魔をしないよう気遣う妹は、義姉からおせち料理を手伝ってと誘われる。
買い忘れたというはんぺんのおつかいに行って、妹はふと「はんぺんなんておせちに使ったっけ?
こんなの本当に要るのかな。別になくたって。別に 私 いなくたって。」と思う。
そっと帰ってしまおうとしたら、義姉が、「ほんとに使うのに!勝手に要らないなんて決めないでよ!」と怒る。
妹が自分を 要らない存在邪魔な存在とひとり決めしたことに対して悲しんでいたのだ。

わが家のおせち、今年は煮しめを作る時間が持てなかったら本家が届けてくれた。
お重は王様が、駅裏の台湾料理屋に注文してくれた。
年末は忙しいだろうから犬を預かろうか、と犬友達が申し出てくれ、
さみしいからときどき近況を知らせてと言ったら、ちょこちょこと友人がメールをくれた。
そんな、なにかあたたかいつっかえ棒があちこちから伸びてきて、
66夜の年始の挨拶にはコメントまでいただける。
さみしがりやのわたしがさみしがらずに、ひとりじゃなかった幸せを思う。

はんぺんを材料に使うおせちがあると知ったのはお正月の少し前に「女の子の食卓」を読んだから。
卵とはんぺんと砂糖をミキサーで混ぜて焼いたら、伊達巻きのできあがり。
王様と鰐号が大好きなおせちだ。



c0002408_323921.jpg
何年も前に撮ったお写真のこの女の子、
今ではすっかりお姉さんになっているかな。
[PR]
by NOONE-sei | 2008-01-07 03:10 | 趣味の書庫話(→タグへ)

66夜 謹賀新年


c0002408_2345644.jpg



王様の千と線を読んでくださる皆様からの
有形無形のお心遣いや、そのさりげなさに
幾度も幾度もありがとうをつぶやいた日々でした。
だから
雪のくにから
旧年中の皆様のご愛顧に心より感謝を込めて   ・・ちぅ



c0002408_23452146.jpg
今夜は初夢。
犬も夢をみるかな。
[PR]
by NOONE-sei | 2008-01-02 23:54