カテゴリ:百夜話 本日の塾(9)( 9 )

99夜 死の顔


塾の先生が、忌引きで休暇を取った。

王様は、それを子どもたちに知らせるか知らせないか迷う。学校なら伝えるだろう。
大きな塾ならピンチヒッターを立てて、学習に穴が開かなければ特には知らせない。
さて、うちは小さな塾だ。知らせることにした。

「△△先生は、お身内にご不幸がありました。お父様を亡くされて、明日、お通夜があります。」
普段耳慣れない言葉を聞かされて、子どもたちはぴんとこない。

  おとなはぐっとこらえて泣き言を言わないから、
  復帰してからもきっとそのことには触れず、いままでどおりだろうということ。
  ただ気づかってやってほしいということ。
  とりだててできることはなにもない、なにもないが、
  ああ、そういうことがあったのだ、と知っていてほしいということ。

それらのことを話し、子どもたちが少し状況が飲み込めたところで聞いてみた。

  お葬式に行ったことのある人は?・・約半数。
  では、死んだひとの顔を見たことのある人は?・・そのまた約半数。

見慣れないものをみて気持ち悪いと思った子も、硬くて怖いと思った子もいるだろう。
これから経験する子も、生とおなじ分だけ死にも尊さがあることに、いつか気づいてくれるといいが。

99夜にふさわしく、死の話を。

死の顔は、何度見ても見慣れるということがない。
小さい頃に見た自ら死んだ人の硬い顔は忘れられないし、
あたりまえのように「またあした。」と言って別れた同級生が突然、朝になったら冷たくなっていて、
駆けつけて見た、まだ自室の布団に眠るままの顔の白さも忘れられない。

自らの死は、その死にいたる背景への周囲の思惑が死体のまわりにふわりふわりと浮遊していた。
突然死は、『生きているような、、』、という、息子の死を受け入れ難い家族の気持ちがあり、
しかし一方では儀式への準備が進む。彼を布団に寝せたまま、二階の自室から階下に下ろし
棺に入れるという、家族のおもいを断ち切るような現実に手を貸した。


まだ死を知らなかった幼いころのこと。
生まれて初めて死の顔を見るより前に、父に聞かされた浜の話がある。

父が少年時代を過ごした浜は、港であり、炭鉱の町でもあった。
 石炭を求めて掘り進めると、湯脈にあたることがある。
豊富な湯は、汲み上げられてもなおどんどん湧き出し、炭坑の外にパイプから溢れている。
ドラム缶に入れ、水でうめた湯はまるで風呂だ。
 ある冬、浮浪者がとぷんとその中に入った。入ったが最後、寒くて上がれない。
幾日も幾日も、父はそこに行くたびに浮浪者が風呂につかり続けるのを見た。
戦争に敗れ、もとより生きる気力そのものが希薄な浮浪者だったから、誰も風呂から引き上げない。
そうしているうちに、からだは水気でふやけ、真っ白になり、それでもつかり続けて
やがて膨れた死体になった。誰がその死に気づき、引き上げ、供養したかは知らない。

この話を聞いたのは、幼い頃に住んでいた山あいの温泉町の、旅館の風呂。
どの家も自宅に風呂はなく、旅館や共同浴場にでかける。
わたしは旅館の風呂が遊び場で、そこではやくざの入れ墨を見ることもあれば、父からは浜の話を聞いた。

死の原風景はわたしの網膜に、映像になって残り、以来、湯でふやけた指を見るとその話を思い出す。

その後、大人になってからは何度も通夜や葬式に出、いくつかの死の顔を見た。
感情が動き出さぬよう、心に鍵をかけて臨むことにしている。
 見ることはお別れだ。
友の死の知らせを遠くからもらったときには、葬式に出席したもののついにその死の顔を見られずに、
わたしのなかでおもいが断ち切れず、彼女はいまでもいつまでも、別れを言ってくれない。
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by NOONE-sei | 2005-04-11 22:58 | 百夜話 本日の塾(9)

90夜 等しく迎える朝


もうすぐ四月。
子供たちは耐えている。
いいことばかりじゃないんだとちゃんとわかっていて、
逃げちゃいけないんだということをわかっているから、だからつらそうだ。

余裕綽々、やる気満々で中学生になるかのような風呂敷を広げても、
ほんとうは王様の袖をつかんで離さなかった小粒にも、

塾ではけたたましく笑い声をたてて毒づいて噛みつく勝気さで売っているけれども、
ほんとうは吐き気をこらえてやっと学校に行っている仔猫にも、

お守りの五円玉をカードを買う税金に使ったと見栄を張っても、
ほんとうは気が小さくて合格発表の日は行方知れずで大騒ぎを起こし、
翌日合格していたことがわかった上等!にも、

あんたたちお子ちゃまとは違うと醒めた目で同世代を見つめても、
ほんとうは「見て見て、わたしだけを見て」」と言っていたいのに言えないレイコさんにも、

学年が変わるという儀式が君たちを待っている。
背中を通して君たちの瞳が見える、泣きそうだ。

また一年間、見て見ぬふりをしてあげるよ。
そして祈るよ、・・君たちに等しく同じ朝がくるように。
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by NOONE-sei | 2005-03-26 18:05 | 百夜話 本日の塾(9)

72夜 とつくにのことば


マイ モザヘラ ウォルクス エベルダイ。
シー ゴエズ トゥー テヘ オフィフィエス トダーーーイ。

ちいさな塾に自転車で通ってきた円卓の子供たち、中学三年生。
推薦で高校に合格した子たちは今日で卒塾。
これから本試験に臨む子たちは、もうひとがんばりしてから卒塾。

三年間、彼らはいろんな顔を見せてくれた。
卒塾はめでたいことなのだがすこしさみしい。
たくさんのエピソードもすぐ側(かたわら)にあって、
それらはまださみしさの近くにありすぎて、文章に置き換えられない。

でも今夜は72夜だからひとつだけ。なに?ということで。
まるで外國(とつくに)のことば。

ともすれば気持ちが不安定になる受験生たちの、ペースメーカー的存在だったカズ君。
受験勉強のための英語を独自の規則性でカタカナ読みに換える。
そして英語の時間はひとりひとりに英語の名前までつけて呼ぶ。
morningはモロニングと全員に言わせ、自分のことは三年間ジミーと呼ばせた。
これがふざけているわけではなく、カズ君は大真面目なのだ。
その真面目さに茶々を入れる子はいつしかひとりもいなくなった。

My mother works everyday.
She goes to the office today.

おかげで、というべきか。
今年の中学三年生たちは全員、不思議なバイリンガルだ。
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by NOONE-sei | 2005-02-25 00:59 | 百夜話 本日の塾(9)

69夜 虫のすみか


葉に豆粒ほどのふくらみが。
枝には鶉(うずら)の卵ほどのふくらみが。
虫こぶというこの中にはアブラムシが生活している。

葉に卵を産み、その葉を巻き上げて幼虫のゆりかごにする虫。
枯れ葉と枯れ葉を口から出した糊で貼り合わせ、小舟にする虫。

ミノムシは、葉や小枝をからだから出す糸で綴って蓑の中で暮らす。

そんな虫たちの暮らしと住処(すみか)を
ちいさいさんたちと知った。

今日は塾。
羊羹を一切れずつ食べながら、円卓をちいさいさんと囲む寒い冬。
今日もわたしは69歳。
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by NOONE-sei | 2005-02-18 18:04 | 百夜話 本日の塾(9)

67夜 年齢詐称


小粒のこと。                

小粒とは、一緒に円卓を囲む仲だ。
勉強を教えていると言いたいが、そう威張ってはいられない。
わたしがもし遅れたら、おやつを奢らされることになっている。
だから、小粒は時間にうるさい。1分の遅刻を心待ちにしている。

あるとき、小粒に歳をきかれた。
いつもしてやられてばかりだ。嘘をついてやれ。

「あのさー、年、いくつ?おれんちのかーちゃん、32だぜ。それより上だろー?」
「あーー、ずっとずーーっと上ですねー、だって70歳だもの。」

「え~?なんかへんだぞ、それ。だって車に年寄りマーク、付いてねぇべ。」
「え?車に、なに?」

「聞こえねーのっ?涙マークだよっ!な・み・だ・マークっ!」
「それ、なに?」

「だからっ!70からは車にシール、貼るんだぞ、それ貼ってねぇべ、だから70じゃねーんだ。」
「ほほう、そういうものなのかぁ。あれは70からなのかぁ。わかった。・・・69歳。」

「なんだ、かーちゃんよりずいぶん年とってんなー、ふーん。」
「もう耳も目も弱いんだから、よろしく頼むよ。」

「おう。しょーがねぇべ。」

高齢ドライバーの紅葉(小粒は涙だと思っている)マークが車に貼ってないから嘘だと気づく小粒は頭が回る。
しかし小学三年生には、まだ人の年齢を察するのは難しいらしい。

小学生低学年の特徴は、世界は自分を中心に回っているということ。
 かけっこがあったとする。
  「あのね、ぼくね、一番だったよ。
  △△ちゃんが前にいるの。走ってたよ。それでねそれでね、・・・ぼく一番だよ。」
前を誰かが走っていて一番であるはずはないのだが、自分は確固とした一番であり矛盾がない。
全世界の王、そしてひとたび傷つこうものならこの世の終わりほどの悲しみ。
男児には特に顕著なこの振れ幅の大きさが、低学年だ。
 三年生でも小柄な小粒も例外ではない。
小粒の話は誰になにで勝ったかそれ一色、そして一番以外の自分を決して認めない。
かっこ悪い自分を見たくない。

白か黒か、即座に答えが出ないものを小粒は嫌う。
ゲーム感覚での一問一答を好み、思考の伴う書くという行為を避ける。
プロセスをすっとばして結論のみを手に入れたがるのをふみとどまらせ、
毎回、あの手この手でその気にさせるのには、こちらもなかなか創意工夫の連続だ。
上手く乗せられないと授業はガタガタになる。ほかの子にも影響が出る。
依怙地になる、屁理屈で応酬、赤ん坊が眠くてぐずるのとおんなじだったりする。

小粒は母が大好き。この世でいちばん好き。
はなまるをあげたものを持たせても、忙しくて見てくれない母だけれど。
 小粒はいい絵を描く。本人には言わないが、幼くてほれぼれするくらいへたくそ。そこがとてもいい。
描いてというと、下手だからいやだ、当然そう答える。わたしが上手下手で評価しないことを知っていても。                       
                                 (~「4夜 世界一」「47夜 やきもち焼き」より~)
その小粒が、もうすぐ小学校を卒業する。
わたしの、ちいさいさんのクラスを終え、中学生の本格的な勉強が始まる。
このごろ、小粒はわたしにありったけの反抗をぶつけることがなくなってきた。
落ち着き始めた子供の開花は、速い。
声が少し低くなってきている。声変わりが始まったのだ。

急がなくていいよ、小粒。
わたしは君が三年生のときからずっと69歳だからね。
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by NOONE-sei | 2005-02-16 00:09 | 百夜話 本日の塾(9)

47夜 やきもち焼き


魚は殿様に焼かせろ、餅は乞食に焼かせろ。
という言葉があるそうで。

魚は遠火でじっくりと焼くから、おっとり刀のお殿様が。餅は近火で焦がさないよう焼くから、
早く食べたいと気をもんでしょっちゅうひっくり返す乞食が焼くと、うまくできるんだそうだ。

今日は一日早く、塾にだんごさしを飾った。
雪ばかりで白い景色はさみしいから、赤・青・黄、蕪や小判や小槌や的当てなどが
賑やかにさがった柳の枝はよく映える。
本当は新粉餅をだんごにまるめて枝を飾るんだけど。

今日の塾のちいさいさんには、冬休みの一番強く印象に残ったことを絵にしてもらった。
その間にわたしは餅焼きだ。
鏡開きの餅を焼いては、砂糖じょうゆをつけまた焼く。今年はだし醤油でやってみたが、
毎度小憎らしい小粒をはじめ、小学生のちいさいさん達は、「せんべだ、せんべ。」
美味かったんだか腹が減ってたんだか、むしゃむしゃと食う。
神事の真似事なんだけど、その意味は、、まあいいか、、、。

出来上がった絵を餅の後に見た。
小粒っ、、、、この画面いっぱいのマグロの刺身はなんだぁ、、、?

小粒の母ちゃんは働いていて、長い休みはずっと小粒を海の近くのばあちゃんちに
預け、母ちゃんの姉妹も皆そうして精一杯働く。
 
たくさんの従兄妹たちと一緒に過ごした冬休み。
小粒にお土産は一度も貰ったことはないが、土産話はいつもきらきらの海自慢だ。
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by NOONE-sei | 2005-01-14 18:26 | 百夜話 本日の塾(9)

45夜 円卓の子供たち


王様のちいさな塾のおはなし。

ちいさな塾は、カーペットに座布団。大きな楕円の、木の机を囲んで、頭をつき合わせて勉強だ。
王様は、円卓が気に入っている。
円卓の騎士ならぬ、円卓の子供たちは、雪でも自転車で通って来る。

塾はちいさいが、やることはちゃんとやる。
学校の授業の内容、定期テストの過去の資料、全国の受験問題等々も揃っている。
 普段は補習型の、中学校の授業にきちんと歩みを合わせた授業。
中間・期末の定期テストの一ヶ月前からは対策講座。
春・夏・冬の学校の長い休みには、各期講習会。
理系・文系にそれぞれ専任の講師がいる。王様が文系。数理の講師はうちの塾には
もったいないようなヒト。うちのほかに、理系大受験生もみている。

ときどき卒塾生たちが遊びに来る。
進学が決まったとか、就職が決まったとか、目出度い知らせを持ってくることもあれば、
今度の(?)彼氏を見てくれとか、中には、親と喧嘩して家を飛び出してくる子もいる。
 携帯で怪しいサイトを利用した料金を払え、と多額の詐欺にあった彼氏のことで
相談に来た子の時には、警察の対策室と連絡を取り合って対応した。

何年もちいさな塾をやっていると、子も親も家庭環境も、さまざまな人間模様に出会う。
子供に関わるということは、同時に親の複雑な心理もやんわりと引き受けるということ。
 ときには親より熱心な祖母のお相手をする、実はこういう家庭は意外に多い。
そして気持ちの深さに、学ぶことも多い。
 またときには、母子家庭の子供が王様を父のように慕う場合もある。

王様が踊り手だとは、だれも知らない。
卒塾して大人になって、初めて王様の踊りを観た子は、ひとりだけ。
塾には演劇や踊りも混じった雑多な本が並べてあるが、子供の目には留まらないらしい。


 自分の塾を持つ以前に出会った子から、王様に突然連絡があった。
音楽大学を卒業し、先生になったという。
その子(もう大人なんだけど)の台詞。
すっかり気持ちは中学生に戻って、思い出と会話しているようで脈絡が
なくなってしまっている。おい、だいじょうぶか?ちゃんと先生、やれてるか?

「俺らと自転車に乗って、電車に乗って、河原をさがしまくって、芋煮しただろー。
あん時、リュックからネギ、はみ出てたぜー。
やっぱなー。
へんなひとだとおもってたよー。
机の上に、中井英夫の『虚無への供物』って本が置いてあったよなー。
俺、読んだよ、ずっとあとになってから。」

この子は未だに王様が踊り手だとは知らないし、円卓のない頃の出会いだ。
でも中には、ほんとうに大勢のなかには一握り、本に目を留めた子もいたということ。

どんな嗅覚で何に出会うか。
王様は、何を子供たちが引き当てるのか、なにもいわずに黙って観ている。
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by NOONE-sei | 2005-01-11 17:32 | 百夜話 本日の塾(9)

31夜 君知る哉?


「僕の両親とは、どういう関係ですか。」
どきっとした。こんな言い方をされたのは、生まれて初めてだ。

王様はちっちゃな塾をやっている。王様は踊り手だが、子供を集めて普段は塾長先生だ。
 15年も音信不通だった、王様の昔の友人から、「息子が高校受験なのだが、
世話になれないだろうか。」と、突然電話があった。

小学生のちいさいさん達と丁度勉強を終えたわたしは、王様に、塾に通い始めた
友人のご子息を紹介された。

 そうか、君は中学三年生になったのか。
父上に面差しがそっくりだ。思わず「はじめまして。」と言ったけれど、君が
ぽやぽやの赤ちゃんだったときに、わたしは君に会っているんだよ。

「僕の両親とは、どういう関係ですか。」
「(えっ!喋れる上に、そう聞くか?)おとうさんからは、聞いてない?」

「いえ、なんにも、、、。」
「そっかー。いきつけの店が一緒でね、君のおかあさんにもそこで会ったんだよ。
おとうさんもおかあさんも、その頃はまだ独身だったんだ。
だから、昔の仲間みたいなものかなぁ。」

「知りませんでした、、。」
「そのうちゆっくり話してあげるよ。」

子供というものは、えてしてどの子も、無意識に親を自分のものだと思っている。
だから、親のことは何でも知っているつもり、逆にいえば知らない面があってはならない。
自分のことは隠したいくせに、親に青春があったことを受け入れたくないという、
背中あわせの感情を内在させているものだ。

 君の当惑した表情を見たから、わたしは嘘つきになろうと思うよ。
君のご両親とは、ごくごく平凡な昔からの知り合いだった。それでいい。

 嘘つきでも、心の中には真実がある。
ほんとうに、わたしは君の父上の話を君にしてあげたい。
君の父上が昔、まんがを描いていたこと。
それはわたしが密かに金字塔と思っている雑誌、「夜行」だったこと。
「ガロ」と「夜行」、ふたつの雑誌があったけれど、君の父上が載せていたのは「夜行」、
そのことにどれほどの意味があるのか、
わかる人はちゃんとわかっていて、今でも忘れないということ。
 君は父上を農業人と思っているだろうが、家を継ぐために父上が筆を折ったこと。

王様は君の父上の単行本を持っていて、そこには父上のサインがあるんだ。
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by NOONE-sei | 2004-12-28 01:53 | 百夜話 本日の塾(9)

4夜 世界一


「セイ、新しいパチンコ屋ができた。大きくて広くてね、あれは東洋一だよ!」

同い年だけど後輩のアキラに誘われて、井の頭線ガード横へ。
東洋一は怪しいが、なるほどぴかぴかだ。
大学生、昼間の娯楽はパチンコ。
今ほどの賭博性がなかった頃だから、元手が少しでもそこそこ遊べた。

ところでわたしは世界一難しい漢字を知っている。ばら(薔薇)だ。
読める、けれど書けない。

つい先ごろ、30年来の記録を塗り替える漢字が出現した。どくろ(髑髏)だ。
記録の更新に異存はないが、発見した子が小憎らしい。
小粒なのにからい。揚げ足をとるわ、「そんなこといつ言った?何時何分何秒?!」
 いつものように悪態をつきながらも、その日はわたしからの提案に気分が乗ったらしい。
カードを二枚一組にして最高に難しい漢字の熟語を書き、トランプのように神経衰弱をする。
「カルタにもできる!一枚は読み札にすればいいんだ!」
小粒、今日は冴えてるし機嫌もいい。読み札なんて趣のある言葉、いつ覚えたんだ?
辞書も使っているじゃないか。
 そして発見したのが、髑髏だ。

大学生、夜の娯楽は酒盛り。
飲めない奴に酒は勧めない。もったいないから。先輩から受け継がれている伝統だ。
すっかり出来上がって、お目出度い一行は東洋一からおめでたさのおすそわけにあずかる。
花環から造花を頂戴して、道端で東洋一を讃え歌い踊る。

小粒、次に得意げに思いついたのが、よろしく(宜しく)。
「小粒、それも難しい漢字だけど、カードに書くなら別の言葉で、熟語のほうがいいと思うよ。」
「熟語だっ!オレ書ける。」
紙切れに書いた漢字は、夜路死苦。
わたしはひっくりかえりそうだった。
「不良か、おまえはーっ!」

世界一を発見した小粒を讃えるべきか、いさめるべきか、、、ひとに言えるほど、
わたしはえらくない。

04.11.20
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by NOONE-sei | 2004-11-27 23:21 | 百夜話 本日の塾(9)