78夜 きょうのふたり


春の雪だ。

父は大雪の中、脚立にのぼっている。
犬はときどき雪の上にちんまりと坐り、父を見上げるようなそぶりを見せる。

「カドマツ」に積もった雪に、父はホースを脚立の上まで引いて水を掛けている。
大輪の白い雪の花を溶かしているのだ。
わたしが度々(たびたび)の雪払いで、松の枝をいくつも折ったことは
内緒にしていても先刻承知、
自ら出張るところが父らしい。


母は眼医者に異常なしと太鼓判を押されて上機嫌。
犬の目が悪くなってから、母は犬に優しい。
もともと犬の扱いの上手いひとだからと感心していたら、
さっさと自分の目の検査に行ってしまうところがなんともかんとも母らしい。

父と母、毎日が大騒動のわが家は、
春の雪のようにすこぶる平穏だ。
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by NOONE-sei | 2005-03-04 18:17 | 百夜話 父のお話(19)


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