数のない夜  空の爬行動物


 ・またまた旅の途中。映画を観る予定の人は読まないほうがいい。


黒い服を着ると、しきたりだとか順列だとかに過敏になってゆく。
黒い服のイメージがだんだんに、正統な正装ではなく土着を全うするための制服、
あるいは、ときに戦闘服といったものに変わってきていてこわい。

従姉妹の葬儀の翌々日は伯父の納骨式。
この地の墓は墓石を開けると土があり、文字通り骨は土に還す。
墓で頭蓋骨を見たので映画を観に行った。
ひとりの時間を持たないと、定針儀の針が現実世界に向かって振り切れてしまう。

「スカイ・クロラ」。
押井守の製作現場、特に音響や声への演出をテレビで観たとき、
空のクロレラって、意味がわからなかった。いや、クロラであってクロレラじゃない。
じゃ、クロウ等(ら)だから、戦闘機の乗り手は、カラスか?
駄洒落を言っていると思うだろうが、これはわたしの脳みその真実なのだ。
翻訳機能でThe Sky Crawlers を見たら「空の爬行動物」になった。
空を這うもの?

声や音に敏感なこの映画の中で、ワインの壜をテーブルに置く音がよかった。
静かな室内にかかる川井憲次の音楽も美しい。
マッチの火の消し方がとても懐かしく、
自分もそんなふうに消していたっけと思い出し、
戦闘機のメカニックの女性に「パトレイバー」のメカニックのおやじさんを思い、
耳長犬に「攻殻機動隊」の「イノセンス」を思い、
主人公に深く関わる女性に草薙素子を思った。
そうしているうちにこれまで見た押井作品群が連なってきて、
長編、短編、実写、アニメーション等々、売れたものも絶対に売れないものも、
押井の、狭いところにこだわって入り込んでゆく感覚が流れ込んできた。
厭世観がぷんぷん匂うのに、どこかにユーモアもあったっけ。
そうだ、クレジットを見ていたらひし美ゆり子の名があったような。

大人にならない子どもが大人みたいに煙草を吸い、酒を飲み、
一丁前の恋をして、一丁前以上に人を殺し、妄(ぼう)として曖昧な生を納得している。
少しだけ長く生きると、ひとと関わることを覚え、
ときには生き直すために死に、ふたりあるいはそれ以上の生を生きる。
そんな映画だった。
もう一度生まれてきたいと思う?子どもたちに語らせたこの問いに、
押井は、それもいいかもしれない、と思うようになれたんだろう。
誰もこんな連想はしないかもしれないが、萩尾望都の「A-A'」の読後感に、
すこし似ている。


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お写真は、七月に見た裏磐梯雄国沼の空。
湿原はニッコウキスゲが満開だった。



シワ コ の通院が終了しました
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by NOONE-sei | 2008-08-13 02:45 | 数のない夜(23)


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