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89夜 霧に巻きたかったミスト


   映画を観る予定の人は読まないほうがいい。

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「煙に巻く」という言葉はあっても、霧は、「巻く」のではなく「巻かれる」だったか。
スティーブン・キング原作の映画「ミスト」、
怖がりのわたしには十分ホラーで心臓に悪かったのだが、
本でいうなら読後感が良くない映画のひとつ。

人間関係や、クリーチャーの展示会を愉しむ映画だったのかな。
この世と地続きでありながら、この世と同じ顔のようでいつしか違う世界に持っていかれるような、
「ドリーム・キャッチャー」は三十倍、「サイレントヒル」は五倍、
「ミスト」よりも誠実な映画だったような気がする。
なんとも嫌な感じを残したあざとい最後が、どうしてもずるく感じられてしまうのだ。

生き残りたい親、生き残ってしまった親、生き残る子、生き残らない子、
勇敢かと思った女教師が涙をこぼし続け、強靭かと思った男性が諦めを悟り、
生きるための行動を起こさなかった者達が運良く生き延びる。

狙っているのだろうな、というのがわかるから、
やるせない霧に巻きたかった作り手が作った、
クリーチャーの触手に黙って巻かれてみたけれど。


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・お写真の背景音は、サミー・ディヴィスJr. の
「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」(帰ってくれたら嬉しいね)という気分 
by NOONE-sei | 2008-06-13 02:20


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