人気ブログランキング | 話題のタグを見る

84夜 きれいな手


目は口ほどにものを云い、というけれど、手もいろいろなことを語ってくれる。
男性で指の細くて長い人はすこし苦手だ。
喋りすぎる手は、酒などの水ものを作るのが似合うようで、すこしこわい。
一方、白くて指が短くて、ふくふくしている手は飽きない。
そういう手は、料理を作るのが似合う。

和菓子の講座に行った。
以前から、菓子には物語があると言う菓子職人だということを知っていたので楽しみだった。
その職人の店には、白髪で白い割烹着を着たかわいらしいおばあちゃんがいて、
代金を渡そうとすると、両の手を重ねてきちんと受け取ってくれる。
季節の菓子のいわれやそれにまつわる古(いにしえ)の物語が書かれたものが置いてあって、
それを読むのも愉しみだった。

講座は学校の調理実習室。
学生に戻ったような気分で、夏の和菓子を作った。

今夜のお写真は、職人さんの手。
トリミングしてあるので大きさがまちまちなのは、勘弁。


84夜 きれいな手_c0002408_2112913.jpg
湧く水(わくみず)という、ずんだ(枝豆の餡)と寒天でかためた菓子。
とよ型という長方形の枠に流し入れる。ここでちょっと教わった科学を。
寒天の凝固点はおおよそ30度、ゼラチンは10度以下。つまり、寒天は常温で固まる。


84夜 きれいな手_c0002408_2114149.jpg

84夜 きれいな手_c0002408_2115240.jpg
葛焼き(くずやき)という、四月から八月のお茶会に供される菓子。
葛を練って蒸し、切り分けて片栗粉をまぶして焼き、焦げ目をつける。

84夜 きれいな手_c0002408_212345.jpg
ここでもちょっと科学を。
焦げ目がつき始めるのは、160度から。


84夜 きれいな手_c0002408_2121675.jpg
室温で固まった湧く水を ものさしで測り長い包丁で切り分ける。
もう、手が覚えていて「ものさし」でなく「目さし」が利くのに、やっぱり測る。


84夜 きれいな手_c0002408_2123337.jpg
焼きあがった葛焼き。


84夜 きれいな手_c0002408_212477.jpg
笹の葉にくるんであるのは道明寺というもち米で作った笹衣(ささごろも)。



ところで受講した学校は西洋の神様がいるところ。
84夜 きれいな手_c0002408_2131755.jpg


84夜 きれいな手_c0002408_214077.jpg


実習中に、気をもんで作っていたら、「お菓子の神様は、急ぐとちゃんとわかるから、
気をもまずにゆっくりやってください。」と教わった。
お菓子の神様はきっと日本の神様なのだろう?
けれども、きれいな手でわたしが受けた至福には、
日本も西洋も、たいして変わりがなかったかもしれない。
by NOONE-sei | 2008-05-19 03:07


<< 85夜 カメラ 83夜 春までの書庫 >>