72夜 手を合わせる


 ・メンタルな話なので引き寄せられる人は読まないほうがいい

入院中、父は幾度もわたしに手を合わせた。
母のわがままを勘弁してやれ、だったり、ありがとうだったり。
手の機能が片方になると片手を上げた。
じゃあな、だったり、承知した、だったり、ありがとうだったり。

父が亡くなって、葬儀では幾度も合掌をさせられた。
礼拝(らいはい)では目までつぶらされる。

初七日を過ぎ、七日七度(なのかななたび)の旅をして、
ゆるゆると浄土に向かう父は、どこに寄り道しているだろう。
父のことだから、道草を食いながらちょろちょろしていることだろう。

遺影の父は明るく笑っているので、
顔を見ながら祭壇に線香をあげると、明るい気持ちになる。
けれど礼拝をすると、病と闘ってもらうためについた、たくさんの嘘を思い出す。
だから、わたしの代わりに、せっせと犬や猫にちーんと鐘を鳴らさせる。
合掌と礼拝もやらせる。
鐘じゃなかった。あの梵音具はリンという名だった。

・・手を合わせる。
ほんとは合掌じゃなくて、そのままぱちぱちと拍手がしたいんだけど。


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父が若造だった頃。

若造のお話



王様の千と線は、わたしが見聞きした拙(つたな)い経験だけでは書き続けられなかった。
父のリアルがわたしの拙い文章にリアリティのようなものをくれたことが幾度もある。
感謝しているから ・・ぱちぱち。

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by NOONE-sei | 2008-02-18 00:45


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