父が入院するといつも思うのだが、 よくよく自分の体に起きていることを知りたい人で、 検査でカメラを入れられれば、もちろん痛みがあって苦しいはずなのだが、 ベッドに戻ると、見た画像やそれについて医者がどう説明したかを まるで見てきたように話す。 つまり、カメラの先に自分が目になって見てきたように、である。 検査は通常はカーテンで見えなくしてあるのだが、父はそれを開けてまで見る。 それなら、と、医者もカメラの目になってよろこんで教えているようなのだ。 父は医者でも科学者でもない、ただの大工だけれど、 知りたい、さわって知りたい、見て知りたい。 科学の子は鉄腕アトムだけれど、科学的に知りたい父は、なに? 自分で自分の体を知るだけでなく、今度は人に教えたくなるものらしく、 病室に来た看護師に様子を尋ねられれば父はぺろんと腹を見せ、 しかもさわってみろと言う。 母はこれが嫌で、人にまでさわらせる気がしれないと言う。 臆病な母は、自分のをさわるのだって気味悪いのに、と。 実習に来ている見習いの看護師がさわりたそうにしているのを見て、 「いいよ!さわってみな!」 嬉々として腹を出した時には、母は即座に 「さわり賃、高いよ!」 ・・これはちょと、「嫌」に、ちがう意味が混じっているかもしれない。
by NOONE-sei
| 2007-10-16 15:45
| 新々々百夜話 父のお話(12)
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