40夜 がんばれ獣


盆の送り火も消えて、今日は、じりじりと続いた夏日と祖霊を送るような雨。
この夏の暑さは、うちにいる動物たちには辛かった。
犬は昼も夜もぐったりと横になっていた。犬の一日は人間の二週間くらいなんだろうか。
年をとって、一日が早くなってきているような気がする。

風通しのいい玄関先は気温が低く、木戸のそばで犬はいつも過ごす。
簾(すだれ)で日陰を作り、日に何度も打ち水をし、飲み物の空き容器に
水をカチコチに凍らせ胸に抱かせる。
天然の長い毛皮を着ているから直(じか)に皮膚には当たらない。
それでもずいぶんと毛を短く刈り込んでやったので、犬種らしさのない姿ではある。
リンパ腺を冷やすといいし、近くに冷気があるだけでもすこしは過ごしやすくなる。
午後は風も止んでしまうので扇風機を回してやる。
シワ コ 、がんばれ。

一方、父じいじと母西太后を僕(しもべ)に従えている猫は、
家の中の、涼しい所涼しい所へと流浪の民ならぬ流浪の猫。
廊下の木床がひんやりするのか、思わぬ所にたっぺらになって寝そべっている。
体の色がまぜこぜ色なので、周囲にまぎれ、うっかり踏んづけそうになって困る。
アク コ 、それなりにがんばってくれ。

この夏、母屋(おもや)の台所では大きな事件が解決した。
西太后の自慢のシステムキッチンは食器棚も流しも桜の無垢材の扉で格好がいい。
ところが流しの下に収納している米びつの回りに虫の糞が出て困っていた。
何度も綺麗にするのだが埒(らち)が明かない。
米びつごと引っ張り出して掃除をしている時に、はたと気づいた。
虫がいない。糞だけがある。

父が懐中電灯で中をよく見て言った。「ネズミの糞だ。」
流しの真下は、隙間が開かぬよう床下との境の穴は配水管をくるむように閉じられているもの
なのだが、明かりを照らして見たらすっぽりと開いていた。つまり、施工時の誤り。
父は大工だから、床下からネズミが上がらぬようちゃちゃっと蓋をこしらえ閉じた。

・・・これで一件は落着したわけなんだが、どうもすっきりしない。
去年の今頃、こんな騒ぎは起きなかった。
周囲には田畑が広がる土地柄だからネズミごときに騒ぐわけではないが、
待っても待ってもツバメが巣をかけてくれないのは
動物を飼っているからだろうと諦めるほど「獣がいる家」なのだ。なぜネズミが出る?

アク コ はせいぜい暑さでへたばったカエルを獲(と)るくらいしかできず、
狩りはいつも母猫に任せっぱなしだった。
ちょうど去年の今頃に母猫が逝き、ネズミにしてみれば「獣がいない家」になったらしい。
こんなふうにして、誰も名を口にしないでいた猫を思った。
ブチ コ 、がんばっていたんだなぁ。


c0002408_23391163.jpg
アク コ :ネズミ?獲るの?わたしがですか?
[PR]
by NOONE-sei | 2007-08-17 23:52


<< 41夜 そっと歌うよ  39夜 ラスベガスには花火が似合う >>