29夜 にわとり鳥と鰐


山の小学校へ獣医のお供で出かけた。
お供と言っても、学校のウサギやニワトリをつかまえておいて、
子ども達が聴診器で心音を聴く間、じっとさせておくくらいのものなんだが。
28夜の子どもは嬉しくなってしまって跳ねていた。

今でも祭にはヒヨコを売っているんだろうか。
売っているのは必ずオスで、雌雄を見分ける技能の職業がある。
わたしが28夜の子ども達くらいの年頃、ヒヨコを買ってきたことがあった。
段ボールの中に電球を入れ、タオルをかぶせて寒くないようにして育てた。
そんなに大事に大きくしたって、白色レグホンはただのオスで、
成鳥になれば凶暴なだけで卵も産まない。

大工の父が大きな鳥小屋をこしらえ、どこからかチャボのメスを貰ってきた。
チャボは白色レグホンに輪をかけて凶暴で、飛べないくせに跳躍して人を蹴った。
成鳥のメスとオスの見分け方は簡単だ。鶏冠(トサカ)の大きさも体の大きさもちがう。
オスの特徴的なのはツメだ。ケヅメという、鋭く曲がったツメが脚の後ろに付いている。
跳躍しては、オスはこれで攻撃する。その攻撃の的に、わたしは幾度もなった。
可愛いと思った記憶がとんとない。名前くらいはあったかもしれないが。
最後は凶暴の極みになった頃、父のところにいた職人が貰い受けて絞めた。

学校の先生が、鳥の群れは子どもの情操教育に良くないんだとこぼしていた。
一羽を標的に、徹底的に群れで攻撃し抜く様をみせないよう、
その一羽は家に持ち帰って隔離するのだという。
けれど現実は、そんなふうに心をくだいて飼育する学校ばかりではない。

久しぶりにチャボをつかまえた。羽をくるむように手で抑える感触が懐かしかった。
学校では普段、飼育係以外は飼育動物に触る機会がない。
この日の鳥を触る子ども達の手は皆こわごわ、ウサギの首の皮もなかなかつかめない。
わに丸も小さい時は犬にも猫にも触れなかった。せめて犬にくらい触れなくてどうする、と犬を飼ったが、
動物が身近にいないまま大きくなる子ども達にとって、動物は皆、動くぬいぐるみだろうか。

明日は、シワ コ が山の小学校よりも小さな小学校にゆく。
では大きな、動くぬいぐるみに、子どもたちの前で吠えさせてみよう。


前回の山の小学校
・本日のお題は、回文になっています。上から読んでも下から読んでも山本山ね。
追って・・
 山本山は回文ではないそうです。下から読んだら、まやともまや、 ・・しくしく

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by NOONE-sei | 2007-06-26 02:27 | 新々百夜話 父のお話(8)


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