21夜 うるわしのミイラ女


霊界通信と言ったら「つのだじろう」、流行(はやり)の霊魂通信じゃない。
でも今夜は霊界通信の話じゃない。漆(うるし)にかぶれたお話。

むかし、わたしは木の芽時になると顔がかぶれた。この地では「かせる」と言う。
すさまじいかゆみに負けて一度かいたら最後、霊界の女になる。
恥じるような過ちをしてしまったわけでもないのに、人さまに会わす顔がないとはこのことで、
文字通り人に会えない顔になる。

むかしのことだから特効薬もなく、それ以上傷だらけにならぬよう、
お医者はわたしの顔を包帯でぐるぐる巻きにした。
だから、うる(わ)しのミイラ女。・・ハズしても、引かないでくれ。

ここの女子高生はブスばっか。・・王様の口癖は辛辣(しんらつ)。
共学じゃないから男の目に鍛えられないのだという。
けれど、べつに女子が綺麗になるのは男が鍛えてくれるからじゃないと思うし、
ある意味、男のいない女子の王国は居心地がよかった。
共学の女子は、知らず知らずのうちに男子という社会的な動物と、そしてその偏屈さと
巧(うま)く折り合いをつけ衝突しない術(すべ)を早くから身につける。
それよりも、すぱっとした、男子より男らしい女子が回りにいるのも気持ちいいものだ。

文学の森で、ロマンチックという木にかぶれているんじゃないかと思う女子がいた。
よく、わたしを案じて彼女はあれこれ心配してくれるのだが、
わたしはそのお姉さんぶるような態度がわずらわしくて反発ばかりして困らせた。
さみしそうに笑う彼女の顔が忘れられない。

あの頃一緒に聴いた曲が流れてきたらわたしを思い出したのだと、彼女が葉書をくれた。
 『あれから何年も経ったけれど、心の中の柔らかい部分はまだあるのだと思った次第。
  それで、あなたに葉書を書きたくなったのです。            4/25の夜に・・・ 』
照れくさい。照れくさくて、困ってしまって、まだ返事を書けずにいる。
嘘のような話だが、彼女は漆を使う職人、蒔絵師のお嫁さんになって遠くにいる。


照れくさくて大きな声じゃ言えないんだが、はねっかえりでゴメンナサイって、返事を書いてみるかな・・・
このまま妖怪「ひくひく目」になるかと思ったが、目の痙攣も治まってきたし。

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by NOONE-sei | 2007-05-24 03:29


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