14夜 箱根はケチの半次郎


小粒が十四歳になった。いや、この秋には十五だ。
小学生のちいさいさんだった頃、塾でわたしが何を言おうとどうおだてようと、
「やだねったら、やだね~~ やだねったら、やだねぇ~~」と、
『箱根八里の半次郎』を歌っていたのに。
それでも作文を書かせようとあの手この手の変化球を繰り出すと、
わたしがセロハンテープで開かなくした百科事典の蛇のページを持って来て、
「見せるぞ見せるぞ」と反撃していたものだったのに。

山椒は小粒でぴりりと辛い、小粒はあっという間に中学三年生。
先日、修学旅行に行ってきた。行き先はディズニーランド。歌っていた箱根までは、行かない。
塾ではいつのころからか、中三になると修学旅行のお土産の菓子を買ってきて見せ合い、
分け合って食べ、下級生にもお裾分けをするようになった。
自分が上の子からしてもらったことを 今度は下の子にして返すというような、
代々のならわしのようになっている。

今年の中三男子は皆ケチんぼだから、お土産はないかもしれないな、と思っていたら、
買ってきたのだ、皆が。しかも、あの小粒もだ。
鞄から菓子の包みを出した小粒が言った。
 「ほい、土産。・・あれ?小学生って、何人だべ?・・足りるかなぁ、、、、。
  足りなかったら、あっからな。もひとつ。」
ちらっと鞄の中のもうひとつの包みを王様に見せた。

楽しい旅の話をしながら皆で菓子をほおばる。
小粒はちいさいさんだった頃から、たとえば何か決めるような話がばらけると、
ばしっと正論を言って、はっとさせる子だった。
不思議なことに、誰よりも自分中心で、いつも自分が一番なのに、そういう時の
当たり前なことを当たり前だと言う小粒には、皆を納得させる力がある。
ケチんぼなどと言っちゃわるかったかな。

さて残りの菓子を下の子たちの分としてひとまとめにして、茶話会の時間はおしまい。
いつもどおりに円卓でお座りして、頭を寄せ合いながら口喧嘩もしながら勉強。
まだ受験生と呼ぶには、この地で言う赤ん坊の意「ややこ(嬰児)」の中三男組。
おしまいは「さぁなら~」と口々に言いながら自転車に乗って帰る。

ややこの塾生が帰った後は、静かな塾。王様がひとり残って仕事をするのだが、、、、
王様は、はっと思い出した。小粒は、もうひとつの包みを鞄から出さずに持ち帰った。
・・あったな、前にもこんなこと。


前にもあった小粒のあんなこと


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ちょっと伸びたつくしは、小粒に似ている。
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by NOONE-sei | 2007-04-29 02:36 | 新々々百夜話 本日の塾(4)


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