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82夜 風雲金閣を告げる


「風雲急を告げる」とはどんな意味だったっけ。
調べたらわかった。今にも大変動が起こりそうな、緊迫した情勢であること。
今夜はでたらめな日本語でいこう。

わに丸の受験はちょうど期末考査の最中だったため、公欠扱いで後日再テストの予定だった。
しかし受験の直後、事態は『風雲急を告げ』、情勢はあれよあれよと変動していった。
何故か再テストは受けられず、教科担任からは零点を言い渡されたという。
まず、卒業に障りがないかどうかを確認しなければならなかった。受験結果もまだ出ていない。
王様とわたしは、学校でなにがあったのか頭がこんがらかりそうだった。
教頭先生から電話をもらい、わに丸は電話で叱られた。
わに丸が主人公になって、わが家は熱情の館と化し、翌日、王様は塾を休んで高校に行った。

学校では担任・教科担任・教頭先生が並んで、王様の前でわに丸に経過確認をした。
聞くべき話を聞かず、訊ねるべきことを訊ねず、するべきことをせず、とうとう今に至ったことを知った。
学校は再テストの場を準備したが、受けさせてもらうための願い出と日時の確認とを怠って
すっぽかしたのはわに丸の方で、日時を知らせてくれなかったという本人の認識だけが
自己中心的だった。そしてそういう累積が情状酌量の余地のない零点だった。

王様は、こんな話をした。
わに丸が高校に入学した当初は遅刻ばかりだったこと。
電車は待ってくれないのに、定刻の電車に乗れない。間に合わない。
電車がオレを待っている、と思っているかのような振る舞いで、
毎日の繰り返しが体に身につくのを 家庭では根気強く待ったこと。
通学のために、いつ・なにを・どこで・どうすべきかを類推するには時間がかかったこと。
「ばかだと思われるでしょうが、赤ん坊だと思わなければやってこれなかったのです。」
そして王様は人目をはばからず、泣いた。
教頭先生はわに丸に人間の性根のなんたるかを説いた。わに丸の将来のために。

脳みそには、沁み込む言葉の穴がたくさんあるとしたら、わに丸の穴は少ない。
教頭先生の言葉でわに丸に残ったものは「親不孝な人間は、俺は大嫌いだ」だった。
学校は少し田舎にあり、先生方は学校を愛していて生徒を思う気持ちを持っている。
わに丸は不真面目な学業不振ではないから、寄せ集めて成績を貰えることになった。
王様の涙と教頭先生の説教があったからといって性格がすぐに変わるものではない。
けれど、人生ならほんのすこし、そしてすこしずつ変わるものかもしれない。
後日の残念な受験結果に醜い言い訳をしたわに丸は、わたしにたたかれはしたけれど。

試験は試練、、、なんて、駄洒落ばかりを並べている情勢ではない。
受験結果が出て、大学だけが道ではないと話し合ったのだが、受けさせてくれと殊勝なことを言う。
よそに比べれば机に向かっている時間はたかがしれているが、夕べの忍者わに丸、
「生まれてから今まで、こんなに勉強したことはない。日本史はもう室町時代だ。
 オレはこの一週間で、金閣寺を建てちまった。」
建てたのか?わに丸が?でたらめな日本語の源はここにある。
鹿苑寺金閣を覚えたらしく、まるで自分が建てたような物言いをするのが、いかにもわに丸らしい。
・・ふう~ん、、、建てたのは、風雲急を告げた「風雲まぼろし城」じゃなかったのか。


これはおまけ
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ここは安達太良の旅館、金閣ならぬ「金泉閣」。松林に佇む一件宿。

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下げてあるのは暖簾(のれん)。最後に「ふう~ん」と書いたからといって、ふんどしじゃない。
中は入ってびっくり混浴の露天風呂。
by NOONE-sei | 2006-12-19 16:42


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