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81夜 妖怪よりもママレンジャー


三たび目の閑話休題にちなんで駄洒落を言うわけじゃないが、
人の生は自分の干支の三周り、十二支の声を三たび聴いたら、それが折り返しなのだとか。
三十六歳を倍したらだいたいの寿命だという計算。現代の寿命はもっと長そうだ。

孫、曾孫(ひまご)、玄孫(やしゃご)まで見たら人は化けるんだと聞いたことがある。
昔の婚姻は早かったから、十代で嫁御になって、子も孫も皆十代で子を産んだならば、
玄孫くらい見られそうなものだと思うが、寿命が今ほど長くはなかった。
それでもなお長生きできて玄孫を抱いたら、人は妖怪に化けるんだろうか。
だとしたら、それはとても幸せな妖怪だ。

「お母さん、戦おう。」
小さい時のわに丸は忍者だった。
最強の敵は妖怪ガシャドクロで、わたしはいつもなにかしらの妖怪の役。
心臓の治療で長い入院中、プレイルームはわたしたちの戦いの場だった。
表記するのが困難な、『どぅふっ』だか『だぉふっ』だか妙な発音のおかしな掛け声で、
正義の忍者は、体当たりで悪い妖怪に挑んできた。
ごっこじゃなくて、完全にわに丸は忍者になりきっている。

テレビの中に入りたいほど戦隊ものが好きなわに丸は、忍者戦隊カクレンジャーの一員だ。
正義の砦は「風雲まぼろし城」、この巨大な要塞は意志を持ち動き出して敵とも戦う。
正義の忍者は赤・白・黄・青・黒、皆それぞれに守護獣を持っている。
猿、鶴、熊、狼、蝦蟇蛙(ガマガエル)、だから自分は緑で、守護獣は鰐(ワニ)なんだという。
みんな英語風にアレンジした名でかっこいい。
レッドサルダー、ホワイトカーク、イエロークマード、ブルーローガン、ブラックガンマー、、、。
わに丸はまだ小さくて英語がわからないから、直(じか)に「グリーンわに」。
本人は大真面目に仲間になったつもり、でもその名前、ちょとかっこわるくないか?

物語の中で生きる子供に、正義が負ける物語はない。
けれど現実は、妖怪もやられてばかりではいられないから、忍者をやっつけてしまうのだ。
「お母さんは妖怪なのに!」
悪い妖怪が勝ってしまう、わに丸はその理不尽さに悔しくて泣いた。
大人なんだから負けてやればいいのに、負けない未熟な妖怪、母、わたし。
今では、わに丸とわたし、どちらが妖怪なのか、ちとわからないけれど、おそらくどちらもが未熟だ。
「たたいちゃいかんよ」どこかでだれかが言ったけれど、
たたいたのだ、わたしは、つい先日。試験の残念な結果の原因は我が身から出たことに他ならない。
わに丸、忍者は言い訳しないものだよ。
by NOONE-sei | 2006-12-16 00:45


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