77夜 山の話 


今年も、熊肉を食ったという話を何度か聞いた。
イノシシや鹿の肉の話も聞いた。馬は普段から店頭にある。

秋の初め、いつも行く山のふもとの公園に熊が出た。
しばらく行かなかったら、今度は猿が出た。
山にどんぐりが足りなくて、里に下りてきたんだという。
公園には、熊に注意、とか、猿に餌を与えないでください、とか注意書きが貼られていて、
役所には「サル餌付け禁止条例施行」というちらしが置いてあった。

東北では熊猟は昔からあって、猟で仕留めた熊肉は食う。
熊を食うというと残酷に聞こえるだろうが、この地ではごく身近なこと。
ある町内の芋煮会では、その山で獲れた熊を三日がかりで臭みを抜いて皆に振舞ったという。
それでもまだ冷凍庫に残してあって、それは新年会のお楽しみなのだとか。
教えてくれた人はその町内の役員で、芋煮会の片付けの後には
会長が、旨い鹿の刺身で労(ねぎら)ってくれたと言っていた。
熊に鹿では精がつき過ぎたのではないかと訊ねたら、その人は参加した人たちの世話で
熊肉どころではなかったから、熊のほうは食わずに済んで良かったと言った。
どうして男衆は、人寄せをするとああいうものを振舞いたがるか、
鉄砲ぶちはとっておきの御馳走で男を上げたいものか、猟を分け合う血が騒ぐか。
人が集まる場で、実際の給仕をする女性たちの陰の功労はたいへんなものだ。

熊の被害に窮した地域では、訓練した犬で熊を追い払うと聞いたが、
この地でも野生の猿を追い払うための犬が訓練され始めたという。
昔は猿の肉を与えて味を覚えさせておいた犬を放すと、猿除けになったとも聞く。
その話をしたら、役員さんは

  「猿は撃てないよね、あれは、熊とちがって銃を向けると手を合わせて拝むから。」
その人はずっと北の生まれで山育ちだそうだが、思い出したように、

  「小さいとき私よりもっと山に友達がいてね、森をあるいて行くと友達が迎えに来るんだよ。
   それがヤギをつれて来るんだ、犬みたいに。私ら、アルプスの少女ハイジだったよ。」
と笑った。
 


今夜は山のお話だが、里のお写真を。
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吾妻おろしを遮る屋敷森。農家の周りは高い木に囲まれている。

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田んぼの用水路。右は枯れた草々、左にはセリ。

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次の夏を待つ桃畑はすこし寒々としてこわい。
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by NOONE-sei | 2006-11-26 01:51


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