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67夜 耳なし芳一赤ちゃんがえり


怪談話じゃなくて、塾のお話。

塾では親子面談がある。
普段、王様が用事で電話すると、女親は用件よりも胸の内を明かしはじめ、長電話になるのが常だ。
小学校までは母親同士がよく情報交換をするものだが、子が中学生になると学校へ行く機会が減り、
母親同士がわが子のことを打ち解けて話す機会が減る。母親の心理は孤独で不安だ。
母は子の評価を自分の評価にすり替えるな、とよくいうけれど、それはまちがいではないけれど、
個としての評価を持たない女親はよりどころがなくて寂しい。
「いい子に育ってますね、おかあさん。」
王様は、電話でも面談でも必ずそう言う。言われたときの女親は声が明るくほどけ、表情がほぐれる。

密かにわたしが耳なし芳一と呼んでいる子が塾生になったのはこんな理由。
塾生、ちょんまげが、
 「うちのお父さんがね、親友の子供を心配してここに紹介するって。すごい馬鹿なんだって。
  私より馬鹿なんだって、きっとすごいよ。馬鹿じゃなくしてくれるんじゃないかって。」

魔法使いじゃないんだから、馬鹿につける薬なんか作れない。
でもとりあえず、来たらいい。そして言っておくが、ちょんまげ、君は馬鹿じゃないし優しい。
そうしてやって来た耳なし芳一は、馬鹿じゃなかった。少なくとも成績は問題ない。
問題は、聞く耳がないことだった。場を読まない。これは、学校では異質な雰囲気だろうな。

親子面談には、両親が来た。学校で、クラス中からボールを投げられた話、無視される話を聞いた。
学校では学年全体の教師が目をかけていくことになったという。
王様は塾の話をした。塾での彼の学年は、彼が話を聞かなくても、結果的に無視されても、全く
気にしないから傷つかない。だから、仕返しもない。なぜかというと、皆が皆、まだ赤ちゃんだから。
この学年は小学校はハガレン(鋼の錬金術師・漫画)で、最近までハンター・ハンター(漫画)に凝り、
王様にそれを読めと強要し、随時、感想まで言わせ続けた。今ではゲームはポケモン、漫画は
ケロロ軍曹を「深い」と言いながら読んでいる。赤ちゃんがえりをしている学年と言ってもいい。
学校では大人っぽく見えるから煙たいけれど、ここで赤ちゃんになってもらいますか。
・・実は耳なし芳一は、すでに塾では影響を受け、赤ちゃんもどきになっていたのだが。

ところで、ちょんまげのところは、親子四人で来た。
 「じいちゃんばあちゃんは、来ないのか?」とは、ちょんまげに王様の冗談。
下の弟はちゃんとおもちゃを持参していた。この弟、いつも姉ちゃんのちょんまげを迎えに来る。
授業が終わると、円卓を掃除するジャンケンをするのだが、なぜかそれに加わる。
そして、たまに負けて、掃除して帰るのだ。ご苦労さん。
by NOONE-sei | 2006-10-29 03:20 | 新々百夜話 本日の塾(9)


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