51夜 彼女のおもひで


彼女とは幼なじみだ。
幼い頃に出会ったわけではないのだが、十八・九の小娘のときであれ、
二十歳(はたち)前の出会いならば、今となっては幼なじみみたいなものだ。

いつも酒を飲みながらなので、会話らしい会話の記憶はない。
ほんとうに料理にセンスの感じられる女性で、
パテやテリーヌやムースの違いなぞよくわからないが、彼女のはんぺんを使った前菜は美味かったし、
水切りした豆腐の味噌漬も美味かった。
正月には彼女手製のおせちを前に、それまでの暴飲暴食が祟って胃痛がひどいのに
目の食欲が胃痛を撃破してどうしても錦玉子が食いたくて、噛みしめるように御馳走になった。
ご飯だけでなく、肩で紐を結ぶサマードレスを手作りしてもらったり、
彼女というと、丁寧な手作業のイメージがある。

普段、スカートをはかないわたしは、靴下にはちょっと洒落たい気持ちがあって、
彼女から昔、花柄の可愛らしい靴下を貰ってからは、
すっかり足元に密かな花模様が気に入って、今でも靴下の花柄には目がない。
けれどあのとき貰った靴下よりも洒落た靴下にはお目にかからず、
あのときの靴下は大事にはいたけれどもう穴があいてしまって悲しい。

遠く離れて暮らしていて、日頃不義理をしているわたしに、彼女が絵本を贈ってくれた。
絵の上手い人だから、いつか彼女の漫画が絵本になればいいのにと思っていた。
わたしは不義理だし、彼女も自分のことをあまり語らない人だから
こんな本が出版されていることをちっとも知らなかった。
彼女もこんな鄙の場所で自分の本がわたしに披露されていることなど知らないだろう。

目出度いので密かに尾頭付きをあげよう。
みしほちゃん、おめでたう。

絵本
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by NOONE-sei | 2006-09-02 14:47 | 趣味の書庫話(→タグへ)


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