逝った猫を思い出しても仕方が無いが、盆に帰る先祖達からひとあし遅れてゆくのか その辺りにブチ コ が居るようで困る。 おかげで、逝ったものを思って泣くわけでもないのに飯が喉を通らない。 ちいさな母猫は、自分より体の大きい、とうに成猫のアク コ に活きた獲物を与え続け、 牙以外の歯がすっかり無くなっていた。 そんなにせっせと狩りに出かけることはなかったのに。 死んでから体中を綺麗に拭いて口の中を拭こうとしたら、歯が無くて、 まだ八歳なのに立派な婆のようだと笑いながらおめかしをしてやった。 嘘のようなはなしだが、その日、雨が上がって虹が出た。 この地には公営の動物の焼き場と共同墓地があるのでありがたい。 坊様に拝んでもらうとか葬式をするとか、とりだててそういったことをやらなくても、 ちゃんと別れができる。 山の斜面は日当たりがよくて果樹が上等なのと同じで、墓も見晴らしがよければ気持ちよかろう。 家で大往生した動物達は、皆そこにいる。 *浜千鳥* 詞 鹿島鳴秋 曲 弘田龍太郎 青い月夜の浜辺には、親を探して鳴く鳥が波の国から生まれでる ・・濡れたつばさの銀の色 夜鳴く鳥の悲しさは、親を尋ねて海越えて月夜の国へ消えてゆく ・・銀のつばさの浜千鳥 子が親を思う気持ちはかくありたい、とひとは思うが、実際には子は母猫を気づかわなかった。 死の概念がないから。人間とは違う意味で動物は淡々としたものである。 *雨降りお月さん* 詞 野口雨情 曲 中山晋平 雨降りお月さん雲の蔭(かげ) お嫁にゆくときゃ誰とゆく 一人で傘(からかさ)差してゆく 傘(からかさ)ないときゃ誰とゆく シャラシャラシャンシャン 鈴つけた お馬にゆられて 濡れてゆく これはなんという名の花だろう。ネコジャラシに似ている。 おそらく先に行って待っているクロに、土産に持っていったらいい。もうわたし達のそばに居なくていいから。 生まれて初めて赤いりぼんをつけておめかししたから、クロもお前に二度惚れするだろうよ。 ・歌詞の漢字・改行箇所は、わたしの目に映る詩に替えています クロの話
by NOONE-sei
| 2006-08-19 01:54
| 本日の産声(8)
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