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46夜 さくらんぼ伝説


春に高校生になった卒塾生たちが、一学期をもうすぐ終えようとしている。
希望校に行けた子、行けなかった子、
懸命に受験勉強をしても結果はさまざまに厳しい。
けれど、皆、納得して高校に行った。
一学期を乗り切ることができれば、なんとか学校を辞めずに続けてくれる。
卒塾生が退学したという話を聞くことはいちばんつらい。

二両編成のちいさな電車に乗って終点の温泉町に行く途中に、果樹園が並ぶ。
果樹試験場という、最新技術で、より味の濃い果物を研究している建物もある。
果樹園を抜けたところには高校が建っている。

電車を降りたら、林檎や桃の街道をてくてく歩いて通うこの高校に行った子たちは、
日々をうららかに過ごしている。
塾に遊びに来たので、王様がその浮世離れしたのんびりさをからかったら、
本人たちはけっこう大変なんだという。
   「万引きとかバイクに乗るとか、普通そういうのが学校から処分を受けるでしょ?
    うちら、もっとあるんだよ。
    林檎や葡萄や桃を取るとね、停学になっちゃうんだ。」

   「そりゃすごいな。・・・果物泥棒は罪が重いんだな?」

   「そう!さくらんぼなんかに手を出したらね、退学だよ、退学!」

   「なんで知ってるんだ?」

   「言い伝えだよー。伝説っていうの?そういうの。」

・・言うんだろうか、そういうのを伝説って。

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宝石のような果物、さくらんぼ。                             <器は気比の鋳物師(いもじ)焼き>
by NOONE-sei | 2006-07-05 23:46 | 新々百夜話 本日の塾(9)


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