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43夜 夏の鳥


風があって爽やかな暑さ。
今日は真夏日だけれど、過ごしやすい。
窓の薄手のカーテンが揺れている。

カッコーの声が聴こえたり、雀の声が聴こえたり。
春の雀は響きのある美しい声なのに、夏の雀はヂュンヂュンと鳴く。
鳥の鳴き声には美しい時期があるものらしく、そんなときには雀さえ美しく鳴き交わす。

わが家は毎年、ツバメが巣をかけるのを待っている。
どういうわけか一度も巣を作ったことがない。
電線やら家の外観の設計やらの加減が巣に向かないのか、
藁をくわえたツバメは見かけるのに、電線にとまりわが家を見つめるツバメも見かけるのに。

昨年は、やっとわが家にも、、、と思うほど同じ軒下に来ては休んでいた。
でもやっぱり巣はかけなくて、ほんとうにがっかりした。
玄関なので困ったとか、食べ物商売だから迷惑なので壊したとか、
他所(よそ)では罰当たりなはなしまで聞くのに。

ツバメは益鳥なのだとか。
そういうことを知らなくとも、農家でも学校でも公民館でも、
巣の真下が汚れても構わぬようフンを受ける皿を置いたり、大切にする様が伺える。
人の集う賑やかな場所を好むというが、わが家ではきっと役不足なんだろう。

父の大工仕事の木材を入れる木小屋(きごや)か納屋(なや)に、
なにやら動物の気配があったことがあり、父は「このクソダマリはハクビシンだ。」と喜んだ。
ハクビシンは、夜目に一度だけ見たことがある。
けして益をもたらす動物とも思えないのだが、
宿を借りに来る動物をむげにもできないから、と父は笑顔だった。

『宿を借りる』とはよく言ったもので、ずっと居つくわけではない。
動物たちは黙ってやってきて、黙って出てゆく。
その骸(むくろ)を見せるまで居ついた、というためしがない。

                  *  *  *

散歩で見た畑のお写真を。
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じゃがいもの花。店頭には新じゃがが出ているが、畑の地物はこれから。
根を掘り起こし、大きさごとに揃えると、親指ほどの小粒の小芋がざる一杯くらいになる。
それを油で揚げて、砂糖を入れた味噌をからめる素朴な畑の味。小芋とりは子供の仕事。

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これから大きくなる予定のピーマン。赤く色づくまで置いた方が味がいい。

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茄子の苗。土に藁を敷くのは、お百姓さんのいたわり。

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かぼちゃの苗。そろそろ黄色い花もあちこちの畑で見られる。ここにも土に藁が。
お百姓さんと日曜農家の違いはこのへんにあるのだろうな。
by NOONE-sei | 2006-06-29 12:43 | 新々百夜話 父のお話(8)


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