風があって爽やかな暑さ。 今日は真夏日だけれど、過ごしやすい。 窓の薄手のカーテンが揺れている。 カッコーの声が聴こえたり、雀の声が聴こえたり。 春の雀は響きのある美しい声なのに、夏の雀はヂュンヂュンと鳴く。 鳥の鳴き声には美しい時期があるものらしく、そんなときには雀さえ美しく鳴き交わす。 わが家は毎年、ツバメが巣をかけるのを待っている。 どういうわけか一度も巣を作ったことがない。 電線やら家の外観の設計やらの加減が巣に向かないのか、 藁をくわえたツバメは見かけるのに、電線にとまりわが家を見つめるツバメも見かけるのに。 昨年は、やっとわが家にも、、、と思うほど同じ軒下に来ては休んでいた。 でもやっぱり巣はかけなくて、ほんとうにがっかりした。 玄関なので困ったとか、食べ物商売だから迷惑なので壊したとか、 他所(よそ)では罰当たりなはなしまで聞くのに。 ツバメは益鳥なのだとか。 そういうことを知らなくとも、農家でも学校でも公民館でも、 巣の真下が汚れても構わぬようフンを受ける皿を置いたり、大切にする様が伺える。 人の集う賑やかな場所を好むというが、わが家ではきっと役不足なんだろう。 父の大工仕事の木材を入れる木小屋(きごや)か納屋(なや)に、 なにやら動物の気配があったことがあり、父は「このクソダマリはハクビシンだ。」と喜んだ。 ハクビシンは、夜目に一度だけ見たことがある。 けして益をもたらす動物とも思えないのだが、 宿を借りに来る動物をむげにもできないから、と父は笑顔だった。 『宿を借りる』とはよく言ったもので、ずっと居つくわけではない。 動物たちは黙ってやってきて、黙って出てゆく。 その骸(むくろ)を見せるまで居ついた、というためしがない。 * * * 散歩で見た畑のお写真を。 根を掘り起こし、大きさごとに揃えると、親指ほどの小粒の小芋がざる一杯くらいになる。 それを油で揚げて、砂糖を入れた味噌をからめる素朴な畑の味。小芋とりは子供の仕事。 お百姓さんと日曜農家の違いはこのへんにあるのだろうな。
by NOONE-sei
| 2006-06-29 12:43
| 新々百夜話 父のお話(8)
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