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34夜 王様と私


無事に山から帰ったわに丸の山岳部は、全国大会の切符を手に入れた。
連続出場している強く頼れる女子と、ついに今年は国体にアベック出場だ。
ただ、わに丸が男子選抜パーティに入れるかどうかはこれからのことなのだが。
運動部とは厳しいものだな。
野球部で、レギュラー・補欠・ベンチに入れない選手がいるのと同じなのだろう。

顧問はしみじみと涙をこぼしたという。
折悪しく、家族に病人が出たのを気づかいながらの引率だったから、
男子初出場の決定に、心の箍(たが)が思いがけず緩んだのだ。
そんなときがあったっていい。

浮かれてゲームとテレビの野球観戦三昧の休日を過ごすわに丸。
何様ぶりとどう闘おうかと思いあぐねていたわたしを尻目に、
身の回りのことをなんにもしないのも、いつもどおり。
肩透かしを食ったような気になるほどに。

六月の、梅雨入り前の過ごしやすさは格別だ。
王様を誘って山のふもとの公園に行った。
犬とたっぷり散歩して、芝生に持って行ったゴザを広げ、お茶とお菓子でのんびりしたら、
林の中でほんとうに眠ってしまった。

国体のために整備した公園だったから、園内が広い。
森も林も変化に富んでいて、敷地には移築した昔の民家が点在している。
林の向こうから、切れ切れにシャンソンが聴こえてきた。
移築した、昔の大きな芝居小屋では能楽などが企画されるのだが、
きょうは音楽の演奏会らしかった。

散歩道のそばの林には茶店がある。
団子やおしるこがあり、コーヒーはない。
ハルジョオンだかヒメジョオンだかが咲いている広い庭に木のテーブルが出ているので、
犬連れでもいいかと王様が店に聞いてくれた。
気を使うこちらとは対照的に、まったくそんなことにはお構いなく
当たり前のようにおしるこを出してくれる鷹揚さに感謝した。
田舎にはドッグカフェなどないけれど、こんな茶店がある。

犬を連れて散歩していたら、すれ違ったおじさんが言った。
「あんた、サクラダトモヲ君にそっくりだ。」
・・犬にである。
サクラダって、誰?トモヲって、男?・・シワ コ はメスなんだけど。

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「わたしのことですか?」

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こんな林の中をてくてく歩く。
by NOONE-sei | 2006-06-05 02:57


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