19夜 天の配剤


じいじが入院するとわに丸はおとなになる。
そのときだけでまた逆戻り、とはいえグラフは山型にゆきつ戻りつしながらわずかずつ上るんだろう。

たびたび排尿に苦しみ、早朝の病院に駆け込むことがあったじいじが、手術をした。
「この量、横綱だったね。」と、ちょびひげの医者が切除した組織の入った瓶を机に置いた。
母、西太后とわたしとで術後に説明を受けたのだが、
腫瘍肥大のメカニズムを慣れた口調で話すちょびひげは、習慣のように瓶を振ってみせた。

わに丸の何様ぶりがいよいよ最高潮になる頃、じいじが入院する。
一昨年の大病のときもそうだった。
今回は、アルバイトで人に揉まれてわに丸なりによく耐えており、少し経験値を上げ始めてもいた。
前回のような動揺は見せず、からりと明るく受け止めたのが救いだ。

手術室に向かうときに、じいじは必ず冗談を言う。
前回は、イカが好物のじいじは「イカ刺し」になって帰ると言った。
今回は何を言うかと期待していたら、ストレッチャーに載せられて「まぐろの切り身」と言った。
この明るさが、なにより救いだ。

今日も歯が痛かった。
じいじの前回の手術には、前日に歯医者で牙を研ぎ、今回は、牙を抜かれた。
わに丸の鎮まりが天の配剤なら、わたしの抜歯も偶然ではない?

明日はパブリックな集いの場でパブリックなセイになる。
18夜のように、血も涙もない、と逆説的な自虐を言ってはいられない。役割でも正義は正義。
・・じいじの名も正義。

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         庭のカタクリ

百夜話 24夜 願い
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by NOONE-sei | 2006-04-19 02:32 | 新々百夜話 父のお話(8)


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