51夜 いまひとたびの蜜月


母、西太后の奇跡か強運か?
父が一時帰宅の許可をもらい、わずかの期間を家で過ごせる。
なにが奇跡か強運か。
それはいっときとはいえ、手術してやっとやっと帰れたのが彼らの結婚記念日だということ。
金婚式だ。

記念になるなにかを母は期待している口ぶりだった。
しかし経過が良好でいずれ退院しても、食事に制限のある父に、旅行や食事会を
プレゼントするわけにもいかない。
王様は新聞社が主催する、金婚式のカップルが集まるセレモニーの今年の日程を調べた。

今朝、父を病院に迎えに行った。
病院は暖房が効いているが、外は寒い。風もある。
すっかり筋肉の萎えた足には歩くのがつらそうだった。

午後、父にすきやきを食べさせたいという母のために、車に母を乗せて買い物へ。
そして帰路、しらたきを買い忘れたという母のために、店をさがす。
ちょうど休みの店や、扱っていない店しかなく、母はもう今日はすきやきはやめにするという。
車はもう、家の近くまで来てしまった。
もう一軒だけ寄ってみよう、と母をうながした。

大型店舗に車で行く暮らしになって久しい。
家から歩ける距離のその店に行くのは、何年ぶりだろう。
母の買い物をわたしは車の中で待った。
 ふいに、小さいころの記憶が蘇った。

父が数奇屋造りの家を建てていたとき。
今住んでいるこの家だ。
父の現場に母と来た。
 石鹸を買ってくるよう、おつかいを言いつけられた。なにか洗うものがあったんだろう。
わたしは小銭を持たされて、はじめてその店にてくてくと歩いた。
買ってきたのは紙の箱にはいった白い石鹸。
でも必要だったのは洗濯用の固形石鹸だったらしい。もう一度取り替えて貰うためにその店へ。
一度目は、はじめての店におつかいだから神妙に行ったが、二度目は道草を食いながら。
あっ、と思ってももうおそい。石鹸を田んぼの水路にぼちゃんと落っことしてしまった。
 半べそをかいて、水に濡れた石鹸の箱をつかんで現場に帰ると、両親にひどく叱られた。
「いやいやながら行ったからだ!」
どちらかがかばうということがあったなら、胸がチクチクする記憶にはならなかったのかもしれないが。

 あれ?
なんでこんなこと思い出したんだろ、、、。
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by NOONE-sei | 2005-01-20 22:44 | 百夜話 父のお話(19)


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