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11夜 いい夜なんだから


むかしに比べたら、電話がかかってくることがめっきりと減った。
だから油断していた。
長電話の沼に、久しぶりに沈められた。

受話器を取った時のひとこえで、長く話したがっていることを感じる。
その晩のひとりは、二時間だった。
翌日のひとりは、二時間半。

わたしを心配していたという年長のふたり。
立て続けだったのはまったくの偶然。

ひとがひとを想い、理解しようとするうちに、『理解しようとしているワタシを理解せよ』に
すり替わってゆくことはないか?
会話を「詰め将棋」のように詰めているうちに、『心配掛けて御免なさい、大丈夫だから』と
嘘を言わせてゆくことはないか?
揺らぎなく息災でいるかと確認しているうちに、『揺らぎがあってこそのセイ』と
矛盾した確認に変わってゆくことはないか?
・・気になっていたわたしの近況を知ることが、いつの間に理解の達成感に変わったんだろう。

ふたりが「こうあっていて欲しい」と願っているセイは、ここにはいない。
そのセイは、会話で理解し合うに充分な語彙を持っている。
誰とも共感し合わない自我を持っている。
わがままな脳に翻弄されて揺らいでいる。
・・ふたりが願うセイは幻想だ。

ここにいるのは、ぼんやりして口下手な、ただの、セイ。
思うのはこんなこと。
・・11夜、いい夢であるように。いい夜なんだから。
by NOONE-sei | 2006-03-26 01:45


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