子どもに話して聞かせるお話。 子どもは怖い話が好きだ。 「黒塚」という能にも謡われる、安達が原の鬼婆伝説。 山姥から逃れるのに、身代わりになって助けてもらう「三枚のお札」。 食を摂らないから家計に都合がいいと娶(めと)った嫁は、 主人の留守に髪の中に隠したもうひとつの口で握り飯をむさぼり食う、鬼婆「二口女」。 女の鬼は皆怖い。 男の鬼も女の鬼も、やっつけられてしまうことに違いはないが、 恐ろしい存在としての男の鬼は、成敗されてめでたしめでたし。 わたしが知っている男の鬼で唯一悲哀があるのは、浜田広介(ひろすけ)の「泣いた赤鬼」。 一方、女の鬼は、子を失くして気がふれて鬼になったとか、その背景が悲しい。 鬼子母神という、人ならぬものとして神や仏の手で昇華してやらねばならぬほど、 母の情愛とは濃くて強(こわ)くて怖いもの? 子ども向けのお話には省かれているけれど、「二口女」の結末も知ると怖い。 鬼になった女房は、自分で作らせた桶の中に亭主を押し込めると、 背負って山奥深く連れ去って行くのだそうだ。 飯も食わずに働き者でよく尽くしたはずの、女房のもう一つの姿を見た亭主は、 女房を人間らしい存在として扱わなかった罰を受けたんだろうか。 親が子にお話を聞かせるのは、絵に描いたような幸せだ。 絵本の読み聞かせや紙芝居もいいけれど、素話(すばなし)。 何も見ないで話して聞かせる物語が、子どものいちばんのご馳走なんだという。 わに丸が寝入るまで、わたしは毎晩絵本を読んで聞かせた。 けれど、素話は苦手だった。なにしろ、わたしの素話ときたらただの思いつきで、 「白いお坊さんと黒いお坊さんが、ふたりで高くて凍った山に登りました、、、」 しかも途中で話が続かなくなる。わに丸はつまらなそうにあくびをしながら寝てしまうのだ。 王様は、わに丸が寝る時間にはほとんど帰ってこれなかったけれど、 それでもたまに、添い寝をしてやれるときがあって、そんな時、素話は王様にかなわない。 わに丸はにこにこして眠る。それはとてもとても小さかったころのこと。 とうの昔に寝る前の読み聞かせはおしまい。 けれどお話みたいに、わたしはもしかすると二口女だ。怖くないけど。 普段は、スナック菓子をほとんど食べないので買い置きもあまりしない我が家。 三ヶ月(みつき)にいっぺんくらい、夜更けに、わたしは憑かれたように一気に食うことがある。 一袋を食えば治まる、理由もわからない。 ・・これはなにかの発作だろうか?
by NOONE-sei
| 2006-03-20 19:35
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