14夜 爺っ子


わに丸は寂しい。
じいじが入院した。

わに丸は生まれたときから心臓が悪かった。
治りそうもないので五歳で手術に踏み切った。
じいじは、その時のことを思えば自分は大丈夫だという。

すっかり図体が大きくなったわに丸。
ちいさいときには手術の跡が大きくあり、しかも胸骨をワイヤーでつないであるため、
胸が縦一直線に張り出してまるで尖った鳩の胸のようだった。
 術後は眠りにつくとコワイモノが現れ、鳥のようにけたたましく鳴く夜がひと月続いた。
コワイモノがいったい何なのか、退治してやろうにもわに丸は幼すぎてただ泣いて鳴く。
 王様はわに丸が寝入る頃に病室にやってくる。
鳥になったわに丸をかかえて病室を飛び出し、人間にもどるまで
人気(ひとけ)のないところで抱きしめ続ける、わたしの毎夜の闘いを励ましに。
 経過が良好だと判断されると最後の処置がなされる。
心臓に、じかに電気ショックを与えるために、抜糸後も残しておいた肋骨下の
ワイヤーの引き抜きだ。
処置室の奥から、かすかな悲鳴。
泣きながら乗り越えたのに、小学校の体育の時間に、
心無いいじめ、「人造人間」には、わたしも泣いた。

そのときのことを思えば、、、
ちいさな頃からじいじに、風呂でからだをつるつるに洗ってもらっていたわに丸。
入院前夜、わに丸は生まれて初めてじいじの背中を流した。
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by NOONE-sei | 2004-12-05 20:24 | 百夜話 父のお話(19)


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