赤まんま(犬蓼)を 赤飯に見立てて料理、花に見立てて花束。 子供の遊びは見立てごっこだ。ままごとは、そのひとつ。 ちいさな頃、とかげのしっぽを見つけたときはうれしかった。 今でこそ、あの類(たぐい)は勘弁してもらいたいが、 あの頃は、ミミズもつまむことができたように思う。 わたしに限らず、今はもう苦手だけれども、 ちいさな頃には、たとえば虫だって掴めた、という人は案外いるんじゃないか? とかげのしっぽは、スープで煮込んだら白雪姫の継母になってしまうので、 毒林檎は作らずに、わたしは宝石箱を作ることにした。 箱を用意するわけではない。 地面を掘って草を敷き、しっぽを置いて周りに花を散らす。 そこいらで拾ったガラスの破片で蓋をし、土を被せて出来上がり。 ときどき土を掻き分けてガラスの下を覗く。 しっぽの棺(ひつぎ)のようだけれど、これは大真面目に宝石箱だ。 けれど次の日もこれを見るかというと、そうでもない。 ・・次の日には次の日の遊びがある。 今朝、新米が幾俵も届いた。 我が家は毎年、一年分の米を近くの兼業農家から譲ってもらう。 今年は米と一緒に、お百姓さんの子供もついてきた。 歳を聞いても、駄賃に菓子を与えても、 この黄色い長靴を履いた子はぺこりんぺこりんとおじぎをする。 今朝は天気が良いのだけれど、きっとこの子はいつも長靴なんだろう。 うちの玄関へのくぐり戸には、木槌が下げてある。 野武士が寺でも訪れて、こんっこんっ、たのもぉーー。とでも言うのに使うような。 それを見つけて見上げた子が、指差してのんのさまと言う。 抱き上げて厚い板を叩かせたら、ちいさな手と手を合わせた。 木魚だと思ったのだろうか。 わたしは小さな頃、月をのんのさまと言って、なぜか手を合わせたけれど、 この子は神も仏も、もしかしたらなんでもかんでものんのさま? きっと年寄りと暮らしているんだろう。 甲にえくぼのある、ちいさな手。 あたり前のように手と手を合わせる不思議なかわいさ。 このままでいればいいのに。 ・・明日は見ないけれど、宝石箱の記憶を 今日一日はときどき覗こう。
by NOONE-sei
| 2005-11-09 10:44
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