51夜 夏は朱、秋は白


人間の一生を四つの季節と色にたとえるとか。
夏は朱(あか)、秋は白。
だから朱夏と白秋。
けれど、ずっと探している夏と秋の間の言葉はみつけられないままだ。

気配はすっかり秋になった。
すすきもよく見かける。
白秋とはもうひとつ、すすきを揺らす風の意だと、なにかで読んだ。

百夜を半分折り返したが、お話というものは丁度で割り切らないほうがよい。
目出度い紅白(朱と白)の後には、折り返しのおまじないを。

北原白秋の詩歌にまじなってもらおう。

ところで童謡でよく知られる彼の名だけれど、詩集や雑誌のお題には惹かれるものがある。
最初の詩集は「邪宗門」、創刊した雑誌には「屋上庭園」「地上巡礼」、、、
詩のお題の数々にも、魅力的なネーミング。
彼は内容の深さというより、守備範囲の広さに目利きがあったのだろうか?
本を読まないわたしは、白秋のことを そうは知らないけれど、
十五、六の小娘だった頃に出会った詩でおまじない。

                    * * * 


   序詩                  北原白秋  ~「思ひ出」より~
                   

思ひ出は首すぢの赤い螢の

午後(ひるすぎ)のおぼつかない触覚(てざはり)のやうに、

ふうわりと青みを帯びた

光るとも見えぬ光?







 
あるひはほのかな穀物の花か、

落穂ひろひの小唄か、

暖かい酒倉の南で

ひき毟(む)しる鳩の毛の白いほめき?

 

音色(ねいろ)ならば笛の類、

蟾蜍(ひきがへる)の啼く

医師の薬のなつかしい晩、

薄らあかりに吹いてるハーモニカ。


 

匂ならば天鵞絨(びろうど)、

骨牌(かるた)の女王(クイン)の眼、

道化たピエローの面(かほ)の

なにかしらさみしい感じ。

 

放埒(はうらつ)の日のやうにつらからず、

熱病のあかるい痛みもないやうで、

それでゐて暮春のやうにやはらかい

思ひ出か、ただし、わが秋の中古伝説(レヂエンド)?
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by NOONE-sei | 2005-09-23 01:23 | 趣味の書庫話(→タグへ)


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