41夜 良い子の見たもの


台風が去って、昨夜は星が。月も明るかった。
41夜、月から始まる良い子のおはなしはどこまでゆくだろう。

とてもちいさい頃に読んだ物語のお題は「たくさんのお月さま」。
お姫さまが、月が欲しいと言ったものだから、大人が困ってしまう物語だ。

家来も魔法使いも数学者も、皆、月は遠くて大きすぎるからと、
たくさんの言い訳をする。
無能な大人たちに代わって、道化師が、
 「お姫さまのお月さまは、どのようなものですか?」と、訊ねてみた。
するとお姫さまは、これこれこのくらいの大きさだと、きちんと答える。
お姫さまが、夜、寝室から眺める月はとてもちいさくて、
目の前に指をかざして、そこから月を見比べれば、ほら簡単だ。

鎖をつけた月のペンダントに喜ぶお姫さま。でも、道化師は悲しい。
可愛らしい月を手に入れたはずなのに、また月は夜になると昇ってくる。
大人たちは、月夜には毎晩目隠しするだとか、月が見えないくらい明るい花火を夜じゅう上げるだとか、
やっぱりとんちんかんだ。
もう、月が昇る。お姫さまになんと言ったらいいんだろう。

道化師がうなだれてお姫さまの寝室を訪ねると、お姫さまは窓から月を見ている。
 「お姫さま、お月さまが出ています、なぜなんでしょう?」
お姫さまは「そんなこと、なんでもないわ、おばかさん。」
歯が抜け替わるのとおんなじ、一角獣が森で角をなくしても生えてくるのとおんなじ。
きっとなんでもそうなんだわ、、と寝入ってしまう、そんなあらすじだった。

この本は、今江祥智が翻訳を手がけた最初の本。そして挿絵は宇野亜喜良。
後に金子國義の絵を見たときにも感じたけれど、彼らが描く女の子は独特だ。
ちいさな良い子のわたしの目には、とても奇妙な女の子達に見えた。
物語に登場する女の子達は、皆「おばかさんね。」とおませなことを言い、少し肩が上がっていて、
一様に奇妙な表情をしている者達として定着してしまった。

外国映画の子役の女の子などにもその奇妙さを感じる。
ふんわりとした髪、大きな目、お人形みたいで、とても生きて呼吸しているようには思えない。
それでいて、すこしこわい。「おばかさんね。」などと言われたらどうしよう。

「不思議の国のアリス」を知ったのはずっと後だったが、この印象は塗り変わらなかった。
実際の物語のアリスは、いつも、あらあら、、と驚きの連続に身を委ねているだけなのに、
わたしの中でのアリスは、奇妙な女の子だ。
リンゼイ・ケンプ・カンパニーの公演「アリス」に登場したアリスは普通の女の子だった。
けれども、妖しい幻想の別世界が舞台では繰り広げられ、総じて
やっぱりアリスを取り巻く世界は奇妙だ。

そうそう、日本にもいた。わたしが女の子と思うひと。
緑魔子という女優さん。
切ないくらいにかわいかったっけ。

ちいさな良い子もおおきくなると、ちいさいときに出会った奇妙にまた会いたいと思うようになる。



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学研から出版された本の表紙絵。ジェームズ・サーバー作


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お姫さま 小さなかんむりがかわいい。


参考 リンゼイ・ケンプ・カンパニー公演「アリス」 №24
参考 リンゼイ・ケンプ・カンパニー
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by NOONE-sei | 2005-08-28 01:31 | 趣味の書庫話(→タグへ)


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