73夜 春の足跡  四

 ・嫌いな人は読まないほうがいい

ほんとうにほんとうに、今夜のおはなしはひどいから、嫌いな人は鳥肌が立つので止めるなら今だ。


わたしは虫なら平気だ。
セミもカマキリもイナゴも掴める。
あ、今、漢字の変換がなにやらもったいぶった印象なので順序どおりに変換してみよう。
蝉・蟷螂・蝗。全部、部首は虫偏。
もったいぶるどころか、恐怖を呼び覚ますので、虫じゃないのに虫偏のあの長いものは、
漢字どころか言葉にもしたくない。
けれども、タグをつけてあるその『長いもの』の数を見ると、結構な数のおはなしを書いている矛盾。
告白?告解?それとも懺悔?
書いてしまわずにはおれない。今夜の「王様の千と線」は掘って埋める讒訴(ざんぞ)の穴だ。
讒訴はわたしの中では「懺阻」というイメージだったのだけれど、調べてみたら違った。
そして方言だった。方言はもともとは古語が地方に残ったものが多く、これは悪口というような意味。

ここのところずっと雨続きだ。
畑や庭木の手入れに精を出すにも、雨の間をぬって空模様と相談しながらやっている。
それら土や樹木や花のことを総称して「園芸」というんだと近頃気づいた。
園芸の話題には邪気がない。人と話していると会話が弾む。学ぶことばかりだ。

今日は雨が降ったり止んだりだった。
ずっと気になっていたカエデの剪定をした。
剪定は先々の枝の流れや勢いを想定しながらするもので、わたしにはまだそこまでの腕も知識もない。
とりあえず葉が込み入っている所に鋏(はさみ)を入れていたらおかしな枝に気がついた。
太すぎるし色もおかしい。 ・・目の前に長いものが絡んでいた。
おぞましい。気持ちが悪い。鳥肌どころではない、ぞぞ毛が立つ。

今年はずっと運が良かった。
年に何度か出くわす長いものに、ほとんど遭わなかった。
このままやりすごせるような気もしていた。 ・・そう上手くいくものではなかった。今日のはひどい。

裏の自動車工場に駆け込んで、退治してくれないかと懇願した。
普段から工場のおじさんたちとは挨拶や言葉を交わし、野菜の苗をもらったりあげたりしていたから、
ツナギを着た青年団のようにわらわらと、長い棒を持ってみんな来てくれた。
中には、工場に出たんだという長いものを撮った携帯を見せてくれようとする親切なおじさんまでいて、
それだけは頑として断らせてもらった。
挨拶程度で、いちばん言葉少ななおじさんが最終的に仕留めてくれて、
その一部始終をわたしは遠くの柱にへばりついて薄目を開けて焦点をずらして見ていた。
それでも瞼の裏側に映像はへばりついて網膜に刻まれる。

騒ぎが静まった頃、おずおずと近づいて行ったら、携帯のおじさんが
「もう行ったでハァ。みんな触れないからナイ、棒の先っちょにひっかけて川に流しに行ったんだー。」
もうひとりのおじさんは
「土は雨でやばしねからナイ、アレも木の上が良かったんだべー。しばらく剪定できねナイ。」
う、、剪定、それは言わないでくれ、と思ったら、道路のむこうでバシバシと音が聞こえた。
生命力の強い長いものが棒でひっぱたかれた音だったんだろう。
やばしない、というのは、例えば濡れた肌着が体にまとわりついたら気持ちが悪いというような不快感のこと。

わたしが剪定している間、長いものは息を潜めて隠れていたのかもしれない。
やばしなくて、川の傍の巣から風に当たりにうちの庭まで来たのかもしれない。
人間に悪さをするわけではないのだ。ただ、理屈ではどうしようもない嫌悪がある。
夕方、一本だけ父の仏壇から線香をもらって庭に立てた。





□五月末の松の剪定
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松の新芽。このままにするとぼさぼさになる。


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思い切りよく、ぼきんと折る。





□口直しに  四月二十八日の菜の花と桃畑
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五月の田植えを待っている、水が入った田んぼ。


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雨が降ると、雨が嫌いだった犬を思い出す。
菜の花が良く似合うその犬は、雨が降ると雨をよけて歩いた。
どこを歩いたって当たる雨には変わりがないのに、柵に沿って歩くと雨が少ないと思い込んでいた。
シワ コ に会いたい。


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菜の花のむこうには桃畑。


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桃の花。
今はもう、ちょうど桃の実の季節。これから盆明け過ぎまで果物と言ったら桃一色。








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仲良く寝ているようで実は動きを抑えられているテン コ 。


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脚にわたしの手を挟んでこの後狩りする猫に変貌します。


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ペロ コ は七月に五歳になりました。
いつもはいつもどおりの誕生日、たいしたことをしてやらない我が家ですが、
シワ コの十五歳を祝ってやれなかったからなのか、鰐号がなんと犬用のケーキを振舞いました。
次のケーキは十歳になってからだそうですが、ほんとのことを言うとあれは人間の口には合いません。
十歳まではいつもどおり、ハム一枚です。




     
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by noone-sei | 2013-07-31 11:59 | Comments(4)
Commented by ひす at 2013-08-04 17:16 x
なるほど…
それはあの子にとっては災難でしたね。
こういう時、置き換えて考えてしまうと、身もだえしてしまいそうになっちゃいますね。
セイさんもそこまで望まれてなかったし、予想もされてなかっただろうし、
オジサンたちも今後のことを思い、良かれと思ってこその行動なので、
誰が悪いわけでもなく…
あえて言えば、間が、運が悪かったとしか言いようがないですね。

聞けばそちらは例年より雨が多いとか。
おそらく地の中に潜むものとしては、過ごしづらく、つい顔を出してしまったんでしょうね。
「やばしない」という言葉、なんだかすごくしっくりきます。

2匹の獣たちは、相変らず穏やかそうで良いですね。
ペロはなんだか風格が出てきて、
テンはなんだか弾ける直前の花火みたいだ!


Commented by NOONE-sei at 2013-08-04 23:29
ひすさん、
ありゃ。読んだのですね?しかも、アレをあの子という?!
いつもはきゃーきゃー騒いでも、
少なくともなにかアクションを起こすほどの距離に近づいたことはなかったんです。
今回は、いやーまいったです・・・
川に流すまでの顛末が激しいこと激しいこと。
毎日映像がまだよぎるんですよ、これ、トラウマかも。
人間以外の生き物に仏の世界はないと思うんですけど、
どうか成仏しておくれよーーー


さて、毎晩寒いくらいの梅雨だったこの地も、きのう梅雨明けしたとききました。
さて今日はちょびっと雨で、日中は暑かったけれども今は涼しいです。
今年はまだエアコンなし。たまに扇風機、のみ。
今日も畑の草むしりと庭の模様替えに励みました♪
ペロ テンものんびり。ペロ コ は変わってきました。
テン コ は花火?おもしろい~
Commented by at 2013-08-13 20:21 x
セイさん、お久しぶりでございます。
お久しぶりなのに、蛇の話題でしたか(笑)
ぼくは蛇だけでなく、虫が付くのは全てNGです、とほほっ!

あ、がんばって職場の人に声をかけまくったんですが、
鰐君のような熱狂的タイガースファンは一人もいませんで、
(いても奧さんや子供がいる人は一人で行けないんです)
結局、チケットをもらってくれる人が見つかりませんでした。
せっかく送ってもらったのに申し訳ないと、お伝えくださいませ。
Commented by noone-sei at 2013-08-31 23:37
桂さん、
コメント欄ではお久しぶりです、お返事、亀ですみません。
そちらはちゃんと拝読しておりますよ~
桂さんけっこうぼやくので、うふふ・・・と読ませていただいてます。
74夜の冒頭に桂さんの夢を無断で拝借しました、ごめんなさい。
とても印象深かったものですから。
ああいうおはなしって、なんか、いいですよね。

鰐がお世話になりました。
↑の内容はすぐに伝えてあります。
鰐は、桂さんとやりとりできただけで十分です。
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