16夜 世にも不幸せな物語の不幸せ


どれだけ美しいものは醜さと境界が際どく、どれだけ清らかさは陰険さと隣合わせで、
ほとんどの道徳は狂気に満ちているか、、、。
単語を入れ替えてみる。 ・・狂気は道徳に満ちている、なんだか魅力的だったりしないか?

「阿修羅城の瞳」を観たときだったか「コンスタンティン」を観たときだったか忘れたが、
「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」の予告を観て、惹かれていた。
 頭の中では、ジュネ&キャロの撮った「ロストチルドレン」(仏)のような映画を期待していた。
子供のように心優しい怪力男や、少女なのに妖しく美しい、孤児院の盗賊団のリーダー、
のみのサーカス、憎たらしいシャム双子の婆さん、おかしな潜水服、同じ顔でねじがゆるい人工的な人々、、、。
異形(いぎょう)でゴシックで、ごった煮で寓意的な、美しい映画。そしてわたしは水がある場所の映画に弱い。

「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」
火事で焼け出された三姉弟妹が、財産を執拗に狙う後見人の魔の手から繰り出される数々の不幸を
知恵と勇気で払いのけてゆく物語。
はじまりが水辺、これが予告にもなっていたのが惹かれたきっかけ。
極端な遠近法で造った背景や風景は意味ありげだったし、家具調度品も必要以上に凝っていたし、
まだ口がきけない、歯だけが異様に頑健な末の幼児の活躍も見たかった。

どんな仕掛けで、どんな非常識で、どれほど裏切ってあちらの世界に持っていってくれるかと
思ったのはわたしの不幸せだったようだ。物語に映像に、狂気がなければ道徳は浮かび上がらない。

そして、やっぱりジム・キャリーはご馳走様だ。
あの過剰なアピールは鼻について受け入れ難い。
 彼の出演した映画、「トゥルーマンショウ」で、主人公の青年は最後に、
なにもかも作り物の島を出て作り物の海を渡るが、この海をみつめるエド・ハリスのまなざしが好きだった。
主役はジム・キャリーでない俳優ならなおよかったのに。


『ジム・キャリー「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」』というサブタイトルにまでなっているから、
彼はほぼ全編に登場するけれど、登場しない場面には素敵な映像がある。
亡くなった両親のシルエットを影絵にした蚊帳の中で、かりそめの家族水入らずになる三姉弟妹。
二軒目に預けられた蛇屋敷の博士が、ちいさなハープのような楽器で弾き語ってくれる静かな夜。

印象的だったのはエンドロール。
この映画でいちばんよかったのは、このアニメーションかもしれない。
背景音も単調だから心地よく、耳に残った。

・・アニメーション。
ふいにロシアのアニメーションをおもいだしちゃった。影絵ではないのだけれど、、。



レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
 水の音を聴きながら、なかなか開かないのにじれながら
 あちこちクリックして観るのは楽しい。
 上映が終わっているので、このサイト、いつまで在るかな。

ロシアのアニメーション
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by NOONE-sei | 2005-06-14 12:43


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