66夜 さくやこのはな 五  もうひとつの生きた心地


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犬が眠りながら脚を動かすのは、こんな夢を見ているからだと思いたい。
このお写真は七年前の今頃のシワ コ 。



雪が降って、路面が凍り、吾妻おろしが吹き下り、時には地吹雪。
気温の変動で昔の古傷が痛んだり頭痛がしたり、体調が良くない時季。
雪道を車で走るとそこここで葬式を見るのは例年のこと。
二月から三月の峠を越えるのは大変なことで、生きることと自然界は直結している。

脳の異常から蘇ったシワ コ は65夜のその後の二週間を順調に回復していった。
が、今週になって、門の前を通った犬に尻尾を高く吠え掛かり、その直後に四肢を投げ出して横転した。
すぐに助け起こしたが茫然自失の様子を見て、わたしは自分で自分に驚いたのだろうと思った。
ところが、翌日も虚脱があり、その翌日もだった。
今になるとそれは虚血による失神だったとわかる。

医者には血圧の変動は命に関わるから覚悟するようにと言われた。
検査は心臓と血液の両面から調べた。
心臓はペースメーカーの役割をきちんと果たしており、問題は血液だとわかった。
骨髄で血液の元は造られているのだが、赤血球と血小板の数値が極端に低い。
増血剤をワンクール投与し、それでも思わしくなかったら輸血をすることになった。

数値から、食欲は出ないし立ち上がることも困難だと医者は言うが、
今日の午前中は立ち上がって餌を食ってから虚脱した。
しかし夕方には立って餌を食いながら虚脱、明日がどうなのかは明日になってみないとわからない。
もう、飼い主の手の届くところではないのだという。

獣たちにユーモアをもらいながらシワ コ とごくごく普通に過ごしたい。
シワ コ は床(とこ)からわたしを目でずっと追う。
いつもどおり、わたしの動きに応じられる準備をしている。
赤身の肉を食う。大根の切れ端を食う。床から半身は起こせる。

医者の言葉、「シワ コ は倒れるたびに、死の淵に行って帰って来ています。
これは飼い主のせいじゃない。あとはシワ コ の気持ち次第なんです。」
シワ コ の気持ち?
犬の気持ち?
医者らしからぬ珍しいことを言う、と、不思議な気持ちで聞いていたら、
「生きた心地」という言葉を教えてくれたのもこの医者、それも二月のことだった。



追って:シワ コ はさきほど息を引き取りました。
     ペロ コ から緊急に血液を貰い、輸血しながら餌も食い、意識もぎりぎりまでありました。
     もう少し看護する時間をくれてもよかったんじゃないか?と言ってやりたいくらいでした。
     十四歳十ヶ月を全うしたシワ コ には、あと数分待ってくれれば会えたのにとも言ってやりたいです。
     ご挨拶はまた改めて次の夜に。




【その後(五)の百夜話】 1夜 生きた心地 2009-02-21





□今から二週間ほど前
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脳の異常から順調に回復していたとき。
シワ コ のためのレバーの匂いに群がった獣たち。


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外の気温は低いけれども、室内はぽかぽかの日。日向ぼっこの三頭。


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まどろみ始めた。



□昨年の六月、いい季節
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外で日向ぼっこ。シワ コ は猫の世話を焼いていた。




     
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by NOONE-sei | 2013-02-24 01:31 | さくやこのはな


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