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35夜 晦日のお題


今年は、展覧会で「ヘ調の譜」という作品を発表した。
わたしが軸になっていた絵の会は、最後の展覧会となった。
以下は目録に掲載した挨拶文である。

『        ~いま立っている場所~
  何年も絵を描くうちに、
  「絵」は難解で苦しいものになりました。
  観念も精神性も表現技術も、
  描くその手から宿るということを忘れて、
  頭で描こうとして傷ついていました。
  「絵」は素朴なおこないだったこと、いま、立っているべき場所を
  ようやく思い出しました。

  「良い絵を描きなさい。
  じょうずに伝えようと思わずに。
  達者な絵になろうと急がないで。」

  今は亡き絵の恩師達が、いつも語りかけていてくれた、
  宝物の言葉がありました。
  この展覧会は、
  おずおずと、たどたどしく、こどものように。
  わたしたちの、いまの、ありのままです。              』

展覧会は劇的空間でありたい。そう願って、不定期に五回の展覧会を開催してきた。
絵画畑の出身でないわたしは、展覧会場を劇場と捉え、入り口は劇場へのいざない
であり、展覧会は公演と等質の、ひそやかな仕掛けで客を招きいれるものだった。
 どの展覧会でも、巧拙とはちがうところで、わたしは旅がしたかった。

集団の「いま立っている場所」に不協和音が生まれる、、、そんなことは、
どの表現のどの集団にも起こり得ることだ。
ひとの心を束ね、意識にタッチしてゆくことの不毛さよりも、
「今立っている場所」とは「これからの場所」でもある。そう考えればいいと思った。
旅の原点に立ち戻り、それぞれの「これからの場所」に発つ。そういうことだ。
 十年以上にわたるひとのつながりは、会の解散で一応の区切りとなった。

 さて、晦日のお題。
音楽の音階にはそれぞれ性質があるのだとか。
たとえば「ピアノコンチェルト△△ in F」 Fとはへ長調のこと。
ヘ長調の音階で作った曲は、平和・前向きを、
ハ長調ではナチュラルなものを、
変ホ長調では神さまの世界を、
それぞれ聴く者にイメージを喚起させるという。

ではわたしは、天から花びらが降ってくるような、「天上の音楽」をさがそう。
by NOONE-sei | 2004-12-31 14:27


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