26夜 草食系と肉食系


 ・今夜の話に引き寄せられる人は読まないほうがいい


大学の帰りに、肉屋に寄ることがある。
この地では老舗の肉屋、すばらしい肉の数々。でも高級なので見るだけ、買うのは惣菜。
コロッケなら肉屋のコロッケに勝るものはないとわたしは思っていて、
だから家でコロッケを揚げることはほとんどない。 ・・いや本当は、
肉屋の売り値と美味さに、わたしが手作りしても労力ばかりでぜんぜん見合わないから。
巷(ちまた)では人間の傾向に草食系と肉食系という分類があるとか。
王様はコロッケが大好きな草食系であり、ほどほどの肉食系でもあり。
その日、肉屋で野菜を貰った。
「これ、もしよかったらどうぞ。」
上下とも真っ白な制服を着た肉屋のおねえさんが、
中玉の可愛い地物の新たまねぎを数個、袋に入れてくれた。

たまに行く喫茶店で会ったおじさんが、とても立腹だった。
奥方が県外の縁者に宅配便でこちらの菓子を送ったら、受け取り拒否で戻ってきたという話。
この地から汚染が来たというイメージを持って恐怖するわけだ。
その話を聞かされた店主もわたしもがっくり。
おじさんはあまりの立腹に早口の横浜弁。「剥がした表土でも送りつけてやろうか」と言う。
わたしは口をあんぐり開けていたけれど、気を取り直してゆっくりと言ってみた。
「前もって、こっちの物を送ってもいい?って聞ける相手じゃなかったんですか?」
するとおじさん、
「僕らが今住んでいる所の、安全基準を満たした物を送っちゃいけないの?」
わたし、
「いやいや、お気持ちはすごくよくわかりますよ。
でも住んでいる所が違えば感じ方もちがうかもしれないでしょう?
こちらの物を・・という気持ちを汲んでくれるかどうかは難しいですよ、こんな時だから。
こうならないように、ああ思われないように、って
先々(さきざき)をいつも点検しながら摩擦を避けるのが、
ここいらへんの人たちの暮らし方や考え方の特徴じゃないでしょうか?」
おじさん、
「僕はねぇ、間違ったことをしてないんだから、それまどろっこしいなぁ。
みんなそうやって考えてるの?」
店主、
「もう。ほんとに子どもみたいなんだからっ。」
叱ってもらうのが会話の妙味なのか、おじさんはいつもこんな感じ。

このおじさんの家では、肉が食卓の主なのだそうだ。
うーん、肉食人種、強い強い。


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◆本日の百ケ日連打
「原子という言葉なら化学。原子力は擬似科学。力が入ると途端に失速する。」
原子力発電所という文字は見るのも書くのもぞっとする砂上の城。



311から四ケ月が経った。
忘れるなと言わんばかりに、長い余震で恐怖が蘇る。
子ども達は積算放射線量計を持たされることになった。

同じ地域にいながら温度差が大きくて、
近くの人たちとさえ迂闊に話すことはちょっとはばかられる。
平静の下にどんな水が流れているのか、計り知れないから。
それは線量計でも計測できないんだ。

年寄りは原発避難の足手まといになるから、と、
あっちに避難こっちに避難でばらばらになった家族の崩壊を悲観して自死した老女が、
「おはかにひなんします」という遺書を残した。
原発の収束は数十年単位と発表された。
さすがに言いたくなったよ。
政治の椅子取りごっこと押し付け合いは大概にしなさい。



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回覧板にはこんなお知らせが。伏字には金平糖を載せてみたよ。


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高校生の学ぶ場。ちゃんと制服を着ているんだなぁ。


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新聞はテレビの報道よりも緊迫感がある。


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ウルトラ文字というのを初めて見た。でもがんばろうって言わないで。


     
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by noone-sei | 2011-07-13 00:10 | 百ケ日連打(9)


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